2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト扁平上皮癌がん幹細胞の腫瘍産生機構及びがん幹細胞を維持するニッチの解明
Project/Area Number |
09J06721
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
厚海 奈穂 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 癌幹細胞 / 扁平上皮癌 / 遺伝子発現抑制 / 転移 |
Research Abstract |
これまで示してきた癌幹細胞の概念に合致する性質に加えて、PDPN^+細胞(以下、PDPN^+)は、PDPN^-細胞(PDPN^-)よりもdoxorubicinへの高い耐性を示した。また、PDPN^+は自己複製と、より分化した細胞の産生により元の腫瘍を再構築することを皮下移植モデルで示していた。加えて、その腫瘍形成能および再構築能が、マウス尾静脈注射による肺の癌胞巣形成モデルでも裏付けられた。PDPNが腫瘍形成に働く機能分子であるのか不明であったので、PDPNの発現をshRNAにより抑制したところ、皮下移値と尾静注の両モデルで、PDPN発現の抑制による腫瘍形成の低下が確認され、doxorubicinへの耐性も低下した。以上の結果から、PDPNがPDPN^+の腫瘍形成と薬剤耐性に寄与することが示唆された。PDPNが、扁平上皮癌組織内癌幹細胞マーカーであるCD44やp63と比べて最も選択的に癌胞巣辺縁を認識する最適な分子であることも示した。遺伝子発現の網羅的解析の結果、遺伝子発現パターンの類似性から、in vitro A431中の、高腫瘍形成能を有するPDPN^+が、癌胞巣辺縁細胞を模倣することが示唆された。また、PDPNとの組み合わせにより、より高い腫瘍形成能を持つ癌幹細胞の同定が可能になるかもしれないin vitroとin vivoの両方のPDPN^+で高発現する膜タンパクを見出した。ヒト生体内における癌幹細胞の挙動を調べるために、食道扁平上皮癌原発巣とリンパ節転移巣のPDPN発現の関係を検討したところ、PDPN陽性原発巣のうち、転移巣も陽性であった割合は、PDPN陰性原発巣における陽性転移巣の割合より有意に高く、原発巣PDPN陽性細胞がPDPN陰性細胞よりも、転移先で腫瘍を形成しやすいことが示唆された。
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Research Products
(5 results)