2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J06736
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
唐牛 祐輔 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ステレオタイプ / ジェンダー / 数学 / ステレオタイプ脅威 |
Research Abstract |
本研究は,ステレオタイプ脅威の生起要因を明らかにし,その問題の解決方法を探ることを目標とする,ステレオタイプ脅威とは,評価懸念が高まる状況下において,ネガティブなステレオタイプ(例"女性は男性に比べて数学が苦手である")が活性化し,それに一致して実際に課題成績が低下してしまうという現象である.本年度は大きく分けて,(1)数学ステレオタイプが自己認知・課題成績に及ぼす影響に関する研究,(2)システム正当化における相補的ステレオタイプ("男性は作動性/女性は共同性が高い")の役割についての研究を行った. 研究1では,評価の存在を示す非言語シグナル(視線)が,女性の潜在的な数学アイデンティティの低下を引き起こすことを実験によって明らかにした.この結果はステレオタイプ脅威の効果とも一致し,当該領域に貢献する知見だと考えられる.加えて,以前実施した親子調査から,母親の潜在的ステレオタイプが,母親の評価を介して,女児の算数の自己評価や課題成績に影響を及ぼすことを明らかにした.非言語行動を中心としたコーディングの結果,母親からの侵入的サポートが評価伝達過程において重要な働きを担っている可能性が示唆された.以上から,ステレオタイプの影響過程における非言語シグナルの重要性が示唆された. 研究2については,既婚男女630名を対象に調査を行い,システム正当化認知傾向が強いほど,相補的ステレオタイプに一致した自己ステレオタイプ化を引き起こし,家庭内での性役割分業を肯定することを明らかにした.これはステレオタイプの再生産過程を示す証拠だと考えられる,加えて実験研究を行い,相補的ステレオタイプへの接触によって女性の認知課題成績が低下することを明らかにした.これは相補的ステレオタイプがシステム正当化だけでなくステレオタイプ脅威と同様の効果を持つことを示しており,両過程の解明に貢献する知見だと考えられる.
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Research Products
(2 results)