2010 Fiscal Year Annual Research Report
極域地震波記録を用いたJフェーズの検出および地球内核のS波速度異方性の検討
Project/Area Number |
09J06753
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
豊国 源知 国立極地研究所, 研究教育系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地震波 / 数値計算 / 差分法 / 非弾性減衰 / 地球中心 / 特異点 / Jフェーズ / 理論波形 |
Research Abstract |
課題第2年度の本年は、昨年度からの理論波形計算手法の精度テストの一環として、定常観測点に加え国際極年(IPY)で新設された南極大陸内陸部の臨時観測点における3成分の広帯域地震波形記録と本研究で開発した手法による理論波形との比較を行い、本手法が南極大陸内陸部でも精度よく観測波形を再現できることを確認した。また南極で観測される遠地地震波形をより精度よく再現するため、理論波形計算手法に地球の自己重力の効果を取り込んだ。2010年7月にフィリピンで発生した深発地震についてJフェーズの同定を試みたが、発見には至らなかった。 本研究で開発している理論波形計算手法「球座標系2.5次元差分法」の精度チェックは昨年度、1994年ボリビア深発地震(Mw=8.2)で観測された国際デジタル地震観測網(FDSN)定常観測点の上下動記録について行った。本年度は2009年11月9日のフィジー深発地震(Mw=7.2)について、定常観測点のほかにIPY2007-2008に伴うプロジェクトで新設された南極大陸内陸部の観測点における3成分観測波形と理論波形との比較を行い、氷床の影響を受ける南極大陸内陸部の観測データも本研究がターゲットとする周波数帯域で精度よく再現できることを確認した。 また本課題で対象としているJフェーズの検出に適したデータは、地球中心角で130゜~160゜程度の震央距離を持つ観測点における比較的長周期の地震波記録である。周期100s以上の地震波形には媒質の自己重力の効果が現れることが知られている。これは特に長周期の遠地地震波記録には顕著になるため、このような観測地震波形と理論地震波形とを直接比較するためには、理論波形計算手法に地球の自己重力の効果を導入することが望ましい。自己重力を考慮した地震波の運動方程式には重力ポテンシャル(1)、および変位による重力ポテンシャルの擾乱(2)を含む項が現れる。このうち(2)を計算するためには、各時間ステップで得られた変位の寄与を全地球について足し合わせる必要があり、計算時間が膨大となる。したがって今回は(2)の項をゼロとするカウリング近似を用いて自己重力の導入を行った。
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Research Products
(6 results)