2010 Fiscal Year Annual Research Report
2次元APCを導入した超伝導薄膜の創製及びAPCの最適化
Project/Area Number |
09J06786
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高村 真琴 九州大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 磁束ピンニング |
Research Abstract |
YBa_2Cu_3O_<7-δ>(YBCO)超伝導体は、高温高磁場中で高い電流特性を有することから薄膜化による線材応用への期待が高いが、液体窒素温度近傍や磁場中での臨界電流密度(J_c)は十分でない。これは、磁場中で電流を流すことでYBCO中に侵入した磁束が動き、抵抗が発生するためである。これに対し、結晶欠陥やnmオーダーの非超伝導析出物を、特定の結晶軸方向に相関をもたせて膜中に人工的に導入することで磁束の動きを止め、その軸方向のJ cを選択的に向上できる。しかしながら、人工ピンを導入したYBCO線材の磁束ピンニング特性は複雑で不明な点が多く、これを基礎的に理解することが線材応用に重要である。本研究では、これまで詳細に調べられていない面状ピン(=2次元APC)に着目し、面状ピンとなる非超伝導体とYBCOとがc軸方向に等間隔で交互に積層される多層膜の作製方法を提案し、面状ピンの配置や密度が磁束ピンニング特性に及ぼす影響を明らかにした。 これまでに、YBCO/PrBCOのα軸配向多層膜を用いることで面状ピンの磁束ピンニング特性を評価できることを実証してきた。当該年度は、まず面状ピンであるPrBCOの積層間隔を変化させた多層膜を作製し、系統的に磁束ピンニング特性を評価した。磁束ピンニング特性評価に一般に用いられる低磁場領域のJ_cの磁場依存性評価法(J_c∞B_<-α>で評価)を多層膜に適用し、極めてOに近いα値を示すことから、ほぼ全ての磁束が面状ピンに直接ピンニングされることを明らかにした。さらにc軸方向に磁場を印加した時のJ_cの変化から、面状ピンはマッチング磁場を超えてもピンニング効率が大きく低下しないことを明らかにした。これは本研究で導入した面状ピンが、液体窒素温度での磁束と同程度の厚みで等間隔に導入され、表面積が大きく1つの面状ピンが複数の磁束と相互作用することから明らかになった特長である。次に、多層膜の電界-電流密度特性をパーコレーション遷移モデルによって定量的に記述し、線状ピンの磁束ピンニング特性との比較を行った。ピンニングパラメータの比較から、面状ピンは線状ピンに比較し強いピンであることを示した。
|
Research Products
(4 results)