Research Abstract |
本研究では,産業廃棄物として排出される浄水汚泥の持続可能な地盤工学的処理システムの構築を目的としている.具体的には,浄水汚泥を地盤材料として利用した後の性状変化と化学的安定性を実験と解析により調査し,浄水汚泥の用途に応じた利用年数を提示する.そして,その結果を流通の仕組みづくりやリスクコミュニケーションの手法に応用する.工学的視点と政策的視点の両方から次世代の処理を考慮した廃棄物の処理システムを構築することは,循環型社会の構築に向けて非常に有意義である. 平成21年度は,浄水汚泥を地盤材料として利用した後の時間経過に伴う性状変化を明らかにするため,第一に凝集剤成分の溶出挙動の解明を行った.長期的な溶出挙動推定において必要なパラメータを取得するため,シリアルバッチ試験の手順を検討,そして実施し,実験結果に基づいて一次元的な凝集剤成分の溶出挙動を推定した.また,本年度は,浄水汚泥の性状変化は有機物の分解と同時進行することも考慮し,浄水汚泥に含まれる有機物の同定および有機物分解速度について実験技術および予測方法を検討した.以上の室内試験と並行して,本研究では実サイトにおいて試験施工を実施した.茨城県日立市内における埋設管埋戻し工事における浄水汚泥の試用である.施工では,脱水方法の異なる浄水汚泥,そして,山砂と混合した浄水汚泥を用いた.平成21年4月に施工し,路面沈下量,亀裂の有無,地盤弾性係数,浸出水のモニタリングを継続している.現時点において,市内の施工において一般的に用いられている山砂とおおよそ同程度の性能が認められている.以上の成果により,浄水汚泥に含まれる凝集剤成分の溶出挙動を明らかにし,また,有機物の分解を同時に考える方法論を示すことができた.そして,実サイトにおける浄水汚泥の有効性についても示すことができた.以上は,浄水汚泥の長期安全性を定量評価する上で重要な知見である.
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