2010 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙初期の軽元素組成の進化と素粒子模型の天文学的制限
Project/Area Number |
09J06817
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日下部 元彦 東京大学, 宇宙線研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 軽元素 / 天体核物理学 / 素粒子 / 宇宙論 / 超対称性理論 / 元素合成 / 初期宇宙 / 星 |
Research Abstract |
1.宇宙背景放射の観測から推測されるバリオン密度に対して標準ビッグバン元素合成理論が予言する^7Liの存在度が、昔できた星で観測される存在度と一致しない問題がある。この問題の原因の解明のため以下の研究を行った。 標準模型を超える素粒子模型の中に長寿命で色を持つ重い粒子が存在し、強い相互作用をするエキゾチックな重い粒子(X^0)を形成し得る。このX^0が元素合成に与える効果の相互作用の強さに対する応答を研究し、元素合成で^7Beを破壊する過程を発見した。これは、X^0が^7Beと反応して^3Heと^4He_x(^4HeとXの束縛状態)に分裂する核反応であり、これが効果的に働くための条件を導いた。X^0の質量が核子質量よりも十分大きいならば、その相互作用は、核子間相互作用よりも1桁程度小さい必要がある。このような粒子をsub-SIMPと呼び、sub-SIMPの存在が^7Li問題(^7Liは^7Beの電子捕獲で作られる)の解の一つとなることを示した。 2.中性子数が比較的少ないp核と呼ばれる35個の安定核がある。このp核の起源天体候補の1つに、熱核爆発型のIa型超新星がある。現実的なIa型超新星モデルと超新星前の星の元素組成を用いて、元素合成を計算し、銀河進化まで定量的に評価した初めてのモデル計算の結果の詳細を発表した。2565核種を含む元素合成の計算結果から、p核とそれに付随して合成される放射性核の組成、核図表上での流れを解析した。そしてIa型超新星がp核の銀河進化に大きく寄与している可能性を示した。 3.天体物理研究のための光分解反応率は、反応を起こす光子についてボルツマン分布を仮定して導くことが多い。きちんと光子についてプランク分布を用いて、ボルツマン分布を用いたときとの差異を評価し、これを表す解析的な式を発表した.そして様々な元素合成過程について補正を調べ、補正が最大となる天体物理学的環境を指摘した。
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Research Products
(10 results)