Research Abstract |
今年度の研究では,グラフのパラメータの下界と,グラフパラメータを求める(または,近似する)問題の計算量について焦点を当てた.研究成果は以下のとおりである. (1)デカルト積で表わされるグラフに対して,木幅とパス幅の下界を求める研究を行った.これにより,あるグラフがデカルト積であらわされる場合の,木幅とパス幅の下界を与えることができた.それらの下界は,例を示すことにより,直接的には改善できないことを示した. (2)全域木混雑度と呼ばれるグラフパラメータを研究し,デカルト積で表わされるグラフに対しての上・下界を求めた.また,全域木混雑度と木幅との関連も示した.全域木混雑度を求める問題の計算量は知られていなかったが,その問題に非常に強い制限を加えてもNP困難であることを示した. (3)ある性質を持つグラフクラス(たとえばAT-freeグラフ)に対して木幅を計算する仕組みを研究し,既存の仕組みを木幅以外の多くのグラフパラメータに適用できるように再定式化した.また,AT-freeグラフと呼ばれるグラフのクラスや,これを真に含むグラフクラスに対して,パス距離幅を近似するアルゴリズムを研究し,それらのクラスに対しては,パス距離幅が定数倍で近似できることを示した. (4)Brigham等によって提示された,あるデカルト積で表わされるグラフに対して安全数というグラフパラメータを求める問題を解決した.グラフの安全数の概念は,Brigham等によって定義された比較的新しいグラフパラメータで,現在のところ,木幅との直接的な関係は示されていない. (5)2部置換グラフと呼ばれるグラフクラスの列挙問題やランダム生成問題を研究した.結果として,与えられた頂点数を持つ全ての2部置換グラフを,(同型なものを省いて)一個あたり最悪でも定数時間で列挙することに成功した.また,与えられた頂点数を持つ2部置換グラフを一様ラシダムに生成することにも成功した.
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