2011 Fiscal Year Annual Research Report
ホヤ幼生の筋肉、脊索、中枢神経系の形成過程における細胞分化と細胞周期制御の相関
Project/Area Number |
09J06882
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 三紀 (徳岡 三紀) 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 発生生物学 / 細胞増殖 / 細胞分化 / Myc / ホヤ |
Research Abstract |
2011年度は2010年度に引き続き、ホヤ幼生の内胚葉および間充織細胞における増殖継続のメカニズムの解明を目指した研究を行った。 2010年度までの研究において、bHLH-LZ型転写因子であるユウレイボヤMyc(Cs-Myc)が幼生の内胚葉および間充織細胞の増殖の継続に必要であることを示してきた。2011年度では、より詳細な解析を進めた。 まず、リアルタイムPCRを用いた解析を行い、Cs-Mycが細胞周期の進行を制御する因子であるCs-CyclinB,EおよびCs-CDK1,2/3,4/6の胚性の発現を制御することによって内胚葉および間充織細胞の増殖継続に関与しているということを明らかにした。哺乳類やハエにおいて、MycはCyclinおよびCDKの発現を制御することが報告されている。今回の解析により、ホヤにおいてもそのメカニズムが保存されていることを示すことが出来た。 次に、Cs-Myc機能阻害胚において、細胞増殖が停止した内胚葉および間充織細胞が細胞周期のどの位相で増殖を停止しているのかを確かめるために、細胞周期の挙動をリアルタイムに観察することが出来る蛍光プローブFucciを用いた解析を行った。その結果、Cs-Myc機能阻害胚において、内胚葉および間充織細胞はどちらもG2期で細胞増殖を停止していることを明らかにした。これらの結果から、Cs-MycがG2/M期の移行に必要であることが分かった。哺乳類の細胞では、多くの場合、MycはG1/M期の移行に必要であることが報告されている。本研究で得られた結果はそれとは異なっており、発生生物学、進化学的に非常に興味深い。 現在は、内胚葉および間充織細胞におけるCs-Mycの発現を制御するエンハンサー領域を同定する解析を進めている。これまでに、Cs-Mycの上流900bpの配列内に、内胚葉および間充織細胞における発現を活性化するエンハンサー領域が含まれていることが分かった。今後はさらに詳細な解析を進め、内胚葉および間充織細胞の増殖継続のメカニズムの全体像を明らかにしていきたい。
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