2010 Fiscal Year Annual Research Report
高速度衝突天体物質と惑星大気間の化学反応による生命前駆物質生成に関する実験的研究
Project/Area Number |
09J06885
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒澤 耕介 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生命起源 / 天体衝突 / シアノ化合物 / 高速度衝突実験 / 2段式軽ガス銃 / 開放系気相化学分析 / 炭素質隕石 |
Research Abstract |
本研究では、天体衝突によって原始無生物地球上に生命前駆物質を供給する可能性について実験的に検証することを目的としている。先行研究から原始地球環境下では、天体衝突による生命前駆物質の合成効率は低く、生体関連分子までの化学進化を起こすのは難しいと考えられている。これは端的には、隕石中には窒素がほとんど含まれていないことが原因である。本研究では衝突天体物質に含まれる炭素と原始地球に豊富に存在したと考えられる窒素が効率よく反応する過程を提唱している。直径1km以下の天体が、低角度斜め衝突を起こした場合、衝突で粉砕された天体が下流側に飛び出し、周辺大気と激しく混合する。この過程は生命前駆物質として最重要物質であるシアノ化合物を効率よく生成できる可能性があるが、複雑な過程であるため、再現実験によるデータをもとにしたモデル化を行うことが求められている。今年度は、宇宙科学研究所の2段式軽ガス銃を利用し、再現実験を行う技術開発を行い、予備的な結果を取得した。従来加速銃を用いた実験では加速ガス、ガンデブリのために生成ガスの化学分析を行うことは困難であったが,これらの化学汚染を極力抑える手法を開発し、ガス分析を行う技術を確立することに成功した。弾丸,標的ともに酸素を含まないプラスチックを用いて、窒素中で衝突を起こした。最終的に生成された気体を簡易ガス検知管で分析したところ,およそ0.1%の蒸発炭素がシアノ化合物に変換されていることがわかった.シアノ化合物は生命起源に最も重要な役割を果たしたと考えられている。今後は実際の隕石試料を標的に用い、シアノ化合物の生成効率を計測する。またパラメータ依存性を調べることで現象のモデル化を行い、実際に原始地球表層環境での天体衝突によるシアノ化合物の合成量を推定していく。
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