2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J06908
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萩野 了子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 序詞 / 紀貫之 / 古今和歌集 / 万葉集 / 掛詞 |
Research Abstract |
前年度に引き続き序詞の研究を進めている中で、やはり歌人それぞれの序詞に対する認識を考察する必要性を感じた。平安時代の和歌に序詞を復興させた古今和歌集撰者、特にそのリーダー的存在である紀貫之に焦点を絞って、序詞に関する考察を行った。そして、古今和歌集、後撰和歌集、拾遺和歌集の三つの勅撰和歌集を通した貫之詠と、古和歌集のみの貫之詠を比較した。他の歌人に見られた新しい手法の序詞を、貫之も詠んでいたにも関わらず、それらは貫之自身が編纂した古今和歌集には採られず、後撰・拾遺和歌集に見られた。このことにより、万葉集から繋がる古風な表現を保持した序詞の担い手として自身を位置づける狙いが彼にあったことが分かった。後撰・拾遺和歌集の序詞への着目は先行研究に見られず、貫之の序詞使用の実態を明らかに出来たことは、古代の人々の修辞意識を考える際に重要な意味を持つ。 また本年度は、序詞だけではなく、掛詞についての考察も行った。万葉集で沢山詠まれた序詞は平安時代に一気に衰退する。それと対照的に、万葉集では殆ど見られず、平安和歌において隆盛するのが掛詞である。その掛詞が、万葉集の中でどのように現れているのか検証した。そして平安時代の掛詞の萌芽といえるものが、縁語を発達させた譬喩歌の中にあることを証明した。この研究も先行研究にない視点から考察を行ったもので、古代和歌の修辞の流れを示すことに成功している。
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Research Products
(3 results)