2009 Fiscal Year Annual Research Report
新資料作成を基礎とするモンテーニュとデカルトにおける人間学に関する問題論的研究
Project/Area Number |
09J06921
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津崎 良典 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | デカルト / モンテーニュ / 人間学 / 道徳論 / 政治論 / 死生学 / 修練 / ストア派 |
Research Abstract |
モンテーニュからデカルトにかけて、「人間」についていかなる考察と言説がなされたのか(なされなかったのか)、この人間学的な問いに哲学史的な観点から検討を加える、という本研究の基礎作業として、初年度は、モンテーニュ関係文書の収集・読解・検討に集中して取り組んだ。具体的な研究成果は以下の通りである。1/モンテーニュとデカルトの一次文献に関して、概念上・主題上の対応関係を指摘しうるテクストの選択・確定を多くの二次文献に依拠しながら行った。その過程で、従来のモンテーニュ研究が重視してきた『エセー』ボルドー版ではなく、1595年版の重要性が自覚された。2/テクスト上の対応関係について、その位置情報と文脈とを示すような、従来の哲学史研究に照らして新資料として位置付けられるコンコーダンスの作成を開始した。その際に、『エセー』についてLeakeが採用する用語別索引(1981年)の手法ではなく、Marcuが採用する主題別索引(1965年)のそれを再評価することで、政治論的人間学と道徳論的人間学という二つの問題構制の設定が本研究にとって有益であることを確認した。3/以上の基礎作業を通して本年度は、来年度の研究計画を先取りつつ、とりわけ後者の問題構制に含められる諸問題のうち、モンテーニュの思索における「死の修練」の意味論と価値論を検討した。ストア的な「準備」という修練とエピクロス的な「転換」というそれに比してモンテーニュの思索の独自性を考察すると同時に、デカルト的死生学との関係性をも指摘して、論文として公表した。4/次年度は、コンコーダンス作成作業の継続、道徳論人間学について取り残された諸問題(情念、心身関係、徳・悪徳、(主体の自己に対する)教育、即自・対自、判断力など)の考察、ならびに未着手である政治論的人間学の諸問題(動物、想像力、習慣・習俗、権威、宗教、改革など)の検討にあてられよう。
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Research Products
(1 results)