2010 Fiscal Year Annual Research Report
新資料作成を基礎とするモンテーニュとデカルトにおける人間学に関する問題論的研究
Project/Area Number |
09J06921
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津崎 良典 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | デカルト / モンテーニュ / 人間学 / 道徳論 / 神論 / ストア哲学 / 修練 |
Research Abstract |
モンテーニュ(M)からデカルト(D)にかけて展開された人間学的思索に関する哲学史的解釈学を課題とする本研究は、昨年度に引き続き、M関係文書の収集・読解・検討に集中して取り組んだ。具体的な研究成果は以下の通りである。1/MとDに関して主題的に論じた邦語・仏語・英語による二次文献のうち、入手可能なものについては、これをほぼすべて消化した。2/MとDの一次文献に関して、概念上・主題上の対応関係を指摘しうるテクストを並列したコンコーダンスの作成のために、『エセー』から哲学的に重要な約二百個の概念を抽出すると同時に、それらを論ずるテクストを『エセー』から選択した(次年度の課題は、今年度に一応の完成をみたMのテクスト一覧表に対応するテクストをDのコーパス全体から選択することである。その過程で、Mに特徴的であってDにとってそうではない哲学的主題の取捨選択などが行われるだろう)。3/以上の作業を通して本年度は、道徳論的人間学という主題に含まれるトポスのうち〈徳・悪徳〉と〈即自・対自〉について、さらに、政治論的人間学に含まれるトポスのうち〈宗教(神論)〉について、それぞれM的思索の独自性を考察すると同時に、D的人間学との関係性をも指摘して、論文執筆・学会発表(申請受理)を行った。とりわけ、前者の主題に関しては、ストア的道徳論において重要な概念となるconstance(恒心)とnonchalance(無頓着)について『エセー』において集中的に検討し、Dの『エセー』読解がD的人間学の形成過程における古代ヘレニズム哲学の受容と変容の機会をなしたことを確認した。4/次年度は、コンコーダンスの完成、道徳論人間学について取り残された諸問題(情念、心身関係、(主体の自己に対する)教育、判断力など)、ならびに政治論的人間学の諸問題(動物、想像力、習慣・習俗、権威、改革など)、それぞれの検討にあてられよう。
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Research Products
(4 results)