2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における青年期女性のキャリア形成に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
09J06924
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 貴子 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 職業婦人 / 女性 / キャリア形成 / 近代日本 / 良妻賢母規範 / M字型就業形態 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
本年は、職業婦人のキャリア形成に関するイメージ(規範)の社会的構築過程を明らかにすること、そして職業婦人自身のキャリアに対する思考様式(主観的世界)の歴史的変遷を明らかにすることという二つの課題に取り組んだ。第一の課題に関しては、大衆婦人雑誌『婦人倶楽部(大日本雄弁会講談社刊)』誌上で提示された「あるべき理想の職業婦人」イメージを通時的に検討することによって、第一次世界大戦後の戦前期日本社会における職業婦人イメージが良妻賢母規範に包摂されていく過程を明らかにした。以上の知見をまとめた論文を「戦前期日本の大衆婦人雑誌にみる職業婦人イメージの変容」というタイトルで日本教育社会学会の学会誌『教育社会学研究』へ投稿した結果、『教育社会学研究第85集』に掲載された(2009年11月1日刊行)。第二の課題に関しては、現在研究遂行中である。具体的には、職業婦人の飛躍的な増加が始まる第一次世界大戦後の1914(大正3)年に読売新聞紙上で創刊された我が国最初の婦人欄である「よみうり婦人附録(のちに「婦人欄」)」に掲載された「身の上相談(のちに「婦人身の上相談(1924年~)」→「悩める女性へ(1931年~)」)」を資料として用いている。これらの記事を、職業婦人の職業、立場(未婚・既婚、子あり・子なし)、悩みの内容・対象、自らの境遇を比較している集団から分類し、その結果と時代変化の検討ならびに考察を行っている。今後は得られた知見をまとめ、学会誌に投稿する。これまでの青年期女性のキャリア形成に関する研究は現代社会を対象としたものが多かった。これらの研究成果は、歴史社会学的な観点から青年期女性のキャリア形成のありようにアプローチし、日本女性に顕著なM字型就業形態など、現在の女性とキャリアの問題を相対化する視点を獲得することを可能にしている。この点にその意義と重要性を見出すことができる。
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