2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における青年期女性のキャリア形成に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
09J06924
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 貴子 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(Dc2)
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Keywords | 職業婦人 / 女性 / キャリア形成 / 近代日本 / 良妻賢母規範 / M字型就業形 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本における青年期女性の近代的職業進出のさきがけである「職業婦人」に注目し、職業婦人のキャリア形成のメカニズムを歴史社会学的に明らかにすることである。青年期女性のキャリア形成を歴史社会学的な観点から明らかにすることは、日本女性に顕著なM字型就業形態など、現在の女性とキャリアの問題を相対化する視点を獲得するために重要であると考える。 本年度は、職業婦人自身のキャリアに対する思考様式(主観的世界)を明らかにすることに取り組んだ。具体的には,1930年代の読売新聞婦人欄「悩める女性へ」を資料として用い,身の上相談にあらわれた職業婦人独自の葛藤を検討した。その結果,学歴差や低賃金,若年定年制などの公的な職場の構造的環境が恋愛・結婚などの私的な側面にも影響を及ぼし,葛藤に直面する職業婦人の姿が明らかとなった。職業婦人の主観的世界に関する従来の研究においては,どちらかというと,女性解放的な側面や職場における仕事上の葛藤などに注目した主観的世界が紹介されることが多かった。本研究では,職業婦人を公領域・私領域において複数の役割を孕んだ一人の女性としてとらえ,彼女ら独自の葛藤を検討し,戦前期における女性にとっての就業の意味を明らかにすることができた。この点に研究の意義と重要性を見出すことができる。 以上の知見をまとめた論文を「1930年代日本における職業婦人の葛藤-読売新聞婦人欄「身の上相談」から-」というタイトルで『京都大学大学院教育学研究科紀要』第57号へ投稿した結果,受理され,掲載決定となった(2011年春刊行予定)。また,2010年9月18,19日に関西大学で行われた日本教育社会学会第62回大会のIII・3「教育の歴史(2)」部会において「戦前期における職業婦人の葛藤-読売新聞婦人欄「身の上相談」から-」というタイトルのもと学会発表(口頭発表)を行った。
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