2009 Fiscal Year Annual Research Report
国際協力分野の数学教育開発における途上国での内発的授業開発研究
Project/Area Number |
09J06986
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
澁谷 渚 Hiroshima University, 大学院・国際協力研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 授業開発 / 数学授業 / 教育の質 / アクションリサーチ / 数学的能力 |
Research Abstract |
平成21年度は、既に2度のザンビアにおける現地調査を終えて、現在は、第5,6学年の数学授業のプロトコールを作成し、児童の学習の課題や特徴について考察を行うとともに、教室全体の指導と学習の相互作用の関連について分析をおこなっている最中である。本研究の問題意識として、教育開発分野の専攻研究において授業の内実に関する議論が十分ではないということ、教科教育的な見方で生徒の認知的発達や理解の様相、授業における教師と生徒の相互作用に切り込んだ研究が多くないということが背景として挙げられる。これらを踏まえて(1)先行研究で有効だと結論付けられている、ドイツの先進的な教材(SLE)を数学の授業実践で用いて、生徒の基礎的計算能力と高次的な数学の考え方の同時的育成を促す(2)現地教員が行うSLEを用いた数学授業改善サイクルである計画-実施-評価-再構成を、教員と実施しながら授業の質の向上を目指す、(3)ザンビアにおけるSLEのシラバス内における定着を日指す、の3点を行う予定であった。実際には、(1)から(3)全てを終え、データ分析を行っている段階である。本研究の意義は、教室をベースとした実際の授業における考察や分析を行うことで、現在ブラックボックス化している開発途上国の子どもの数学学習の現状を明らかにしながら、改善のための手掛かりを提案するものである。究極的には、教育の質の改善のために有益な分析結果を提供する。これまで言われていた「生徒の低学力」に一石を投じ、子どもたちはどのような学習の可能性を有しているのか、また学習課題は何なのか、といった詳細な記述を行うことで、教授的示唆を与え、ひいては授業開発のための原理を創出することを目指している。本研究では、一般化することは事例が少ないために難しいが、授業開発原理を提示することで、研究の成果の汎用性も目指している。
|