2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経ネットワーク理論を用いた睡眠覚醒制御機構の解析
Project/Area Number |
09J06989
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
上野 太郎 熊本大学, 大学院・医学教育部, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 睡眠 / 覚醒 / ショウジョウバエ / ドーパミン |
Research Abstract |
睡眠および覚醒は、哺乳類から昆虫まで見られる生理現象であり、その分子基盤の解明が待たれている。遺伝学的ツールとして広く用いられるショウジョウバエにおいても睡眠覚醒の存在が知られており、昆虫と哺乳類において共通の遺伝子が保存されているため、睡眠覚醒の分子基盤を解明するためのモデル動物としてショウジョウバエは適している。 本研究の目的は、ショウジョウバエをモデル動物として睡眠覚醒の制御機構を解明することである。当研究室では、短時間睡眠のショウジョウバエ変異体として、ドパミントランスポーターの変異体(fumin)が、見出されている(Kume et al. 2005, J.Neurosci)。一方で、ドパミンは、睡眠覚醒制御の他に、記憶学習などの生理機能も併せ持つ。これら異なった作用がドパミンによって実現されるメカニズムを調べるために、fumin変異体を用いて研究を実施した。fumin変異体においてD1-like receptorであるDopRのノックアウトを行ったところ、短時間睡眠の表現型が消失し、ドパミンシグナルによる睡眠覚醒制御がDopRを介していることが明らかとなった。睡眠覚醒に関わるドパミン神経を一細胞レベルで特定するために、モザイク解析を用いて温度感受性チャネルを一部のドパミン神経のみで発現させるシステム(MARCM法)を立ち上げ、神経ネットワークの同定を行った。また並行して、fumin変異体においてドパミントランスポーターを組織特異的に発現させることで、睡眠覚醒に関わる脳組織の特定を試みた。その結果、ドパミン神経以外のグリア細胞などにおいて、ドパミントランスポーターを発現させることによっても、fumin変異体の表現型が消失することが明らかとなった。これはシナプス間隙外のドパミン量によって、睡眠覚醒が制御されていることを示唆しており、睡眠覚醒を制御する神経伝達方法としてvolume transmissionの方式が存在すると考えられる。
|
Research Products
(2 results)