2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経ネットワーク理論を用いた睡眠覚醒制御機構の解析
Project/Area Number |
09J06989
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
上野 太郎 熊本大学, 発生医学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 睡眠 / 覚醒 / ドーパミン / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
睡眠および覚醒は、哺乳類から昆虫まで見られる生理現象であり、その分子基盤の解明が待たれている。遺伝学的ツールとして広く用いられるショウジョウバエにおいても睡眠覚醒の存在が知られており、昆虫と哺乳類において共通の遺伝子が保存されているため、睡眠覚醒の分子基盤を解明するためのモデル動物としてショウジョウバエは適している。 本研究の目的は、ショウジョウバエをモデル動物として睡眠覚醒の制御機構を解明することである。睡眠覚醒に関わるドパミン神経を特定することを目的に、ドパミン神経のクラスターごとの神経活動の制御を行った。ドパミン神経全体において、Naチャネルや温度感受性チャネルを発現させ、神経活動の活性化を行うと、ショウジョウバエの睡眠は抑制される。記憶学習に関与することが知られているドパミン神経群において同様の操作を行ったところ、睡眠の変化は認めず、睡眠覚醒と記憶学習に関わるドパミン神経が異なることが示唆された。睡眠覚醒に関わるドパミン神経を一細胞レベルで特定するために、モザイク解析を用いて温度感受性チャネルを一部のドパミン神経のみで発現させるシステム(MARCM法)を立ち上げ、モザイク法を用いて少数のドーパミン神経に温度依存性チャネルを発現させることにより、睡眠覚醒に関わるドーパミン神経回路を特定することを試みた。その結果、PPM3クラスターのドーパミン神経を活性化させることで覚醒が誘導されることが明らかになった。このドーパミン神経はFan-shaped body(FB)と呼ばれる構造体に投射しており、さらにFBのD1型のドーパミン受容体(dDA1)がドーパミンによる覚醒作用を担っていることを遺伝学的に証明した。一方、記憶はこの回路ではなくキノコ体のdDA1が司っており、睡眠と記憶の回路が異なることが示された。
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Research Products
(7 results)