2009 Fiscal Year Annual Research Report
熱水系地下生命環境の解明~同位体マルチプロファイルからのアプローチ~
Project/Area Number |
09J07007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山岡 香子 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 熱水循環 / オフィオライト / 酸素同位体 / 水素同位体 / ホウ素同位体 |
Research Abstract |
中央海嶺における熱水循環の詳細を明らかにするため,オマーンオフィオライト海洋地殻岩の同位体地球化学的研究を行った.主な成果は以下の3項目にまとめられる. 1.オマーンオフィオライト海洋地殻の酸素・水素同位体比 酸素同位体比が示す温度と変質鉱物組成が示す温度との比較から,上部地殻は海嶺軸上で高温の熱水変質を受けたのち,軸から離れたところでも継続的に低温の熱水循環があったが,下部地殻と反応したのは300℃以上の高温の熱水に限られることがわかった.また,モホ面付近まで水/岩石比1-2程度で熱水の流入があったことが示された.下部地殻では大規模な海水の超臨界二相分離が起こり,海水と明らかに異なる水素同位体比を持つ熱水が周囲の岩石と反応している可能性が示された. 2.珪酸塩におけるホウ素同位体分析手法の改良 イオンクロマトグラフィーを用いたホウ素の化学分離について詳細に検討し,標準岩石試料を用いて分析法の精度・確度および再現性について評価した.その結果,既存の分析法の10分の1である100ng相当でのホウ素同位体分析が可能となる手法を新しく確立することが出来た. 3.オマーンオフィオライト海洋地殻のホウ素濃度・同位体比 ホウ素濃度は深度とともに減少傾向を示したが,海洋地殻全体を通して新鮮な岩石のホウ素濃度より高く,岩石中のホウ素は海水から付加されたことを意味する.ホウ素同位体比は深度にそって増加傾向を示し,反応温度上昇にともなう同位体分別係数の減少を反映していると考えられた.フラックス計算から,海洋地殻は下部地殻も含めてホウ素の大きな吸収源となっており,河川による海洋へのインプットフラックスのおよそ30%を除去すると見積もられた.さらに,熱水変質を通じて海洋地殻のホウ素同位体比は10‰近く増加することが明らかになった.
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Research Products
(8 results)