2010 Fiscal Year Annual Research Report
熱水系地下生命環境の解明~同位体マルチプロファイルからのアプローチ~
Project/Area Number |
09J07007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山岡 香子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 熱水循環 / オフィオライト / ホウ素同位体 / 酸素同位体 / 微量元素 / 硫化物鉱床 |
Research Abstract |
1.酸素およびホウ素同位体を用いたオマーンオフィオライト海洋地殻岩の熱水循環の研究について論文をまとめ,国際誌に投稿した.投稿論文の主旨は以下の通りである. (1)酸素同位体比にもとづき,熱水変質の反応条件(温度,水/岩石比)を推定した.変質鉱物組成のみにもとづく温度の見積もりでは,熱水変質の最高温度しかもとめられなかったが,酸素同位体の結果により,上部地殻の大部分が軸付近での高温変質ののち,低温熱水変質を受けていることが明らかになった.また,熱水循環は下部ハンレイ岩までおよび,1程度の水/岩石比で反応したと見積もった. (2)ホウ素濃度は深度に沿って減少するが,高温変質を受けた下部地殻でも有意に高い値を示す.これにより,これまでの考え方とは逆に,高温変質でもホウ素は岩石に取り込まれ,熱水変質した海洋地殻はホウ素の大きなシンクとなっていることを明らかにした.特に,重いホウ素(11B)に富む下部地殻は,沈み込み帯における島弧火山岩の高いホウ素同位体比を説明できる可能性が示唆される. (3)ホウ素同位体比は,深度に沿って明瞭な増加傾向を示した.また,酸素同位体比とは逆相関を示し,オマーンオフィオライト海洋地殻のホウ素同位体比は熱水とほぼ平衡に達しており,基本的に変質温度に支配されていることを明らかにした.海洋地殻全体の平均ホウ素同位体比は7.9‰であり,熱水変質を通じて10‰以上増加することが示された. 2.オマーンオフィオライト海洋地殻について微量元素の深度プロファイルを作成し,熱水変質における各元素の挙動を明らかにした. 3.トルードスオフィオライト海洋地殻岩および海底下の鉱床帯について,ホウ素同位体を適用した共同研究を行い,硫化物鉱床の生成プロセスについて明らかにした.
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Research Products
(6 results)