2009 Fiscal Year Annual Research Report
インド洋海域世界の「近代」:奴隷交易の変容を事例にして
Project/Area Number |
09J07031
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
鈴木 英明 The Toyo Bunko, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | インド洋 / 海域世界 / 湾岸諸国 / マダガスカル / インド / 奴隷 / 近代 / 商業ネットワーク |
Research Abstract |
本研究は、奴隷交易に携わる人々の変容からインド洋西海域世界に於ける近代を考察することを目的とするものである。本年度は以下の研究を行った。 1.ヌシ・ベ島に関する事例考察: 19世紀の変容を窺ううえでマダガスカル島北西沖のこの島の変容は重要な事例を提供する。この島がフランスの保護下に入ったのではなく、それを契機としてインド洋西海域世界の「繋がり合い」の構造のなかにも組み込まれていった点を明らかにした。 2.湾岸諸国における文献および実地調査: オマーンのスールでは、有力ナーホダーを家系に持つ人物との接触に成功し、現在も交流を継続している。次年度以降に行う現地調査に於いて、重要な情報提供者となることが期待される。 また、クウェイトでは、現地の研究機関を訪問し、同国に於ける海洋史研究についての詳細な情報や資料を獲得した。 湾岸諸国の現地研究者や現地の人々の情報はこれまでの日本や欧米の19世紀を題材としたインド洋海域史研究では殆ど取り上げられてこなかった。それ故に、今後、こうした人々と交流を深め、そこから得た情報を用いることができれば、この分野の研究に新しい展望を開くことができると考えている。 3.アフリカ大陸東部沿岸のインド系住民による国籍問題: 奴隷交易の重要な担い手である彼らについて、奴隷の所有に関連して発生した国籍問題を取り扱った。彼らの商業的な繁栄の一端は自らを複数の政治権力の庇護下に置くことによって築かれたが、それが奴隷交易廃絶活動の進展とともに変容していく点を明らかにした。この問題は、奴隷交易が19世紀のインド洋西海域に於いて、他の社会的関係と独立して存在していなかったことを証左する好例といえる。 4.フランス船籍に関する問題: これも奴隷交易が他の社会的関係と独立して存在しなかったことを証左する一例として取り上げた。
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Research Products
(5 results)