2009 Fiscal Year Annual Research Report
動的面不斉を有するケトンの創製とそれを基盤とする新規不斉合成法の開拓
Project/Area Number |
09J07048
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 寛子 Kyushu University, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 面性キラリティー / 面不斉分子 / ケトン / エノラート |
Research Abstract |
面不斉化合物は中心性不斉や軸性不斉を有するキラル化合物とは異なり,環骨格の歪みによりラセミ化速度が調整可能である.これら面不斉分子の構造とラセミ化の速度の関係を明らかにすると共に,そのラセミ化の速度に応じた反応開発を行うことができれば,新たなキラル化合物としての応用展開が期待される.本研究では,官能基化された面不斉分子の基礎科学的性質の解明と共に,これらをキラルテンプレートとして用いた光学活性化合物の新規合成法の開拓を行うものである.本年度は,(1)骨格内にカルボニル基を導入したケトンおよびそのエノラート誘導体の合成ならびに物性評価と,(2)それらを用いた立体特異的反応について検討した.(1)まず,面性キラリティーを有する5,6-トランスシクロノネンにカルボニル基を導入することで光学純度の半減期が150倍以上長くなること,さらにエノラート誘導体はケトンに比較し500倍以上長くなることを明らかにした.これら結果は,トランスアルケン部位にかかる歪みの増加に伴いアルケン部の反転によるラセミ化の速度が遅くなったものと考えられる. 次に,金属エノラートなど化学的に不安定なエノラート中間体における立体化学的安定性について,光学活性なアシルエノラートを用いた多段階アシル基変換反応により評価した.その結果,3種類の異なるエノラート中間体を経由する変換反応においても光学純度の低下は観測されなかったことから,これら一連の中間体エノラートが立体化学的に安定に存在することを証明した.
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Research Products
(4 results)