2010 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀の循環器疾患リスクファクターとしての可能性―ヒト曝露モデルからの検証―
Project/Area Number |
09J07094
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柳沼 梢 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | メチル水銀 / 循環器疾患 / 心拍変動 / 自律神経機能 / 魚摂取 / 不飽和脂肪酸 / セレン |
Research Abstract |
本研究は、メチル水銀曝露の心血管系への影響について明らかにすることを目的としている。22年度は、赤血球・血漿中総水銀/メチル水銀濃度、血漿中不飽和脂肪酸濃度および血漿中微量元素濃度のデータを揃え、魚を介したメチル水銀曝露の交絡因子(不飽和脂肪酸、セレン)について検証した。曝露群の全血中メチル水銀濃度は、6.3±3.1ng/g(ベースライン時),23.3±5.9ng/g(曝露終了時),11.4±4.1ng/g(観察終了時)と曝露に伴い有意に変動した(p<0.001)。そして、血漿中不飽和脂肪酸のDHA+EPA濃度は、140.9±49.5μg/ml, 122.5±44.7μg/ml, 115.1±38.0μg/mlと有意な減少傾向(p=0.045)を示し、血漿中微量元素のセレン濃度は、132.2±17.2ng/ml, 128.1±18.0ng/ml, 127.8±16.7ng/mlで有意な変動を示さなかった。全血中メチル水銀濃度と心拍変動パラメータとの関係を、血漿中DHA+EPA濃度、血漿中セレン濃度、および性・年齢・BMIを変数に加えて重回帰分析を行なったところ、曝露終了時の交感神経成分の心拍変動(CCV_<LF>)との間に有意な正の関連性が認められた(β=0.040, p<0.05)。以上の結果から、不飽和脂肪酸やセレンといった交絡因子の影響を考慮しても、メチル水銀が心臓の自律神経機能に変動を与えることが明らかになった。このことは、長期のメチル水銀曝露が、交感副交感神経バランスに関連する心疾患の潜在的リスクを高めることを示唆していた。
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Research Products
(2 results)