2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J07106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤間 達哉 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機化学 / 全合成 / アルカロイド |
Research Abstract |
昨年度までにマンザミンAの全合成を達成し、その合成経路の最適化を完了した。そこで、今年度は今回確立した全合成経路において新たに見いだされた反応条件についてその詳細や一般性について研究を行い、全合成研究で得られた知見が広く用いることができるものであるかどうかを検証することとした。その最たるものとして不安定なシロキシジエンを用いるディールズ-アルダー反応における酢酸ナトリウムの添加の効果について焦点をおき、様々な検討を行った。この効果について、シロキシジエンの合成の際に用いているトリフルオロメタンスルホン酸塩の微量の混入によるシロキシジエンの分解の抑制あるいは酢酸イオンがシロキシジエンのケイ素に配位することで反応性を向上させている可能性が考えられた。酢酸リチウム、酢酸カリウム等の類似の塩基や炭酸塩やピリジン等の他の塩基、ケイ素に対して配位して反応性を高めることが知られているルイス塩基のヨードベンゼン等の添加を行って反応の様子を観察した。その結果、酢酸ナトリウムの主な役割は微量混入したトリフルオロメタンスルホン酸塩の緩衝材として働いているものだとわかった。これに加えて、ヨードベンゼン等の弱いルイス塩基の添加は反応に影響を与えないのに対し、N,N-ジメチルアミノピリジン等の強いルイス塩基の添加はシロキシジエンの分解を促進することが判明した。この結果は、シリケートの形成がこの場合のディールズ-アルダー反応において反応の促進効果を示さず、分解する経路を優先することを示しており、シリケートを形成することなく緩衝材として働くことができる酢酸ナトリウムが良好な結果に結びつくことになったことを示している。このような現象は一般に不安定なシロキシジエンを用いるディールズ-アルダー反応に用いることができる方法論であると考えられ、これまで困難とされていた環化付加反応を可能にし得るものであると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は3年の計画で全合成を完了する予定であったが、それに付随して得られた知見を深く掘り下げる研究を追加して行うことができ、より綿密に研究を行い、多くの知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における最大の目的であるマンザミンAの全合成は終えることができた。加えて、それに付随する研究項目についても十分な知見を得ることができたため、主たる部分はこれで完了したものといえる。しかし、当初計画していた誘導体化の可能性について若干の課題が残されている。下部8員環の構築に閉環メタセシスを用いてやることが主な障害となっているため、還元的アルキル化反応や分子内求核置換反応、マクロラクタム化等の他の方法論による8員環の構築法を確立することが誘導体化の可能性を開く足掛かりになると考えられる。
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