2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代における国制と社会-神祇令・僧尼令研究の視点から-
Project/Area Number |
09J07116
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久禮 旦雄 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 法学 / 日本史 / 法制史 / 宗教史 |
Research Abstract |
前年度の法制史学会総会での報告をもとに、論文「神祇令の特質とその前提-古代国家祭祀の理念と現実-」としてまとめ、神祇令の理念性と、その理念の前提となった七世紀の古代における神祇統制について論じた。当該論文は『法学論叢』に投稿し、『法学論叢』169巻2号・4号に掲載予定である。神祇式の成立した社会における神祇観について論じた「鳴動の「起源」-石清水八幡宮の成立との関係を中心に」を2010年4月18日、東アジア怪異学会にて報告し、九世紀における石清水八幡宮の成立が、律令国家の神祇統制から逸脱したものであったことを論じた。以上の研究実績をもとに、博士論文『日本古代の神祇関係法制の理念と社会』をまとめ、提出した。 この研究は、神祇令から神祇式に至る歴史的展開過程を、当時の政権構造や社会の変化の中で具体的に考察することで、日本古代における国家支配を正当化するイデオロギー装置としての祭祀を規定する法が、社会といかなる関係を結んだかを考察したものである。その中では神祇令・神祇式は共に同時代における神祇祭祀全体を把握したものではなく、社会においてはその内部で形成された、法に規定されない多様な祭祀が機能していたことを指摘した上で、二つの法の違いを以下のように論じた。即ち七世紀の神祇令は同時代の在地社会における祭祀に、理念的な祭祀の枠組みを与えようとしたために、在地社会との断絶が発生した自己完結した法体系であるのに対して、九世紀の神祇式は、同時代の社会的な動きを取り込もうという志向を持ちながらも、社会の展開をすべて取り込むことはできなかった不完全な法体系であった、と。これらの研究は従来注釈や法制史的な編纂過程の研究が中心であった神祇令・神祇式研究に社会史的視点を導入し、法社会史的な位置づけを試みたものとして評価することが可能である。
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Research Products
(3 results)