2009 Fiscal Year Annual Research Report
生物形態の不連続性はなぜ生ずるか。構造的安定性からの検証
Project/Area Number |
09J07131
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡嶌 亮子 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | モデル化 / 進化 / 機能形態 |
Research Abstract |
生物における不連続性の生成機構を明らかにする為、「陸産貝類に見られる殻のspire index(縦横比)の不連続分布は、異なる表面上での殻バランスによって生じた」という仮説の検証を行った。すなわち、陸産貝類では横長と縦長の殻をもつ貝が多いという二極化が世界中で示されているが、両者の形態はそれぞれ水平な面と垂直な面への適応であるという仮説である。 まず、各spire indexをもつ貝の、水平面及び垂直面上でのバランスをモーメントによって算出した。その結果、水平面でのバランスに適していたのは、仮説通り、横長の殻であった。しかし垂直面では横長と縦長、双方の殻のバランスが良く、最もバランスが悪いspire indexは1.4という中間的な値であることが明らかとなった。そこで、実際の陸産貝類のspire indexを計測し、その頻度分布を作成したところ、最も頻度の低い値は1.2と理論値に非常に近いことが明らかとなった。 これらの結果から、陸産貝類の殻形態の二極化はバランスによって生じたとする既存の仮説が支持された。しかし従来の仮説とは違い、垂直面上でのバランスへの適応のみで、殻の二極化は生じえるということが分かった。これらはこれまで、定量化されてこなかった殻のバランスを推定したことで、初めて明らかになったことである。更に、陸産貝類では、その系統樹から、横長と縦長の分岐が複数回、独立に起こったことが分かっている。本研究を通して、単一の環境と条件によっても不連続性は生じるということ、生物がその適応度曲面の谷を越えて、ある山から別の山へと進化してきたことが示された。
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Research Products
(3 results)