2009 Fiscal Year Annual Research Report
ミイラ体組織の代謝速度差を利用した同位体分析による生活復元法の確立
Project/Area Number |
09J07140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀧上 舞 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Pachacamac遺跡 / 毛髪 / 炭素・窒素安定同位体比 / 放射性炭素年代測定 / 季節変動 / 酸素同位体比 / 国際情報交換(ペルー,アメリカ) |
Research Abstract |
平成21年度の研究は、毛髪の経時的食性変遷の調査を進めた。毛髪の分析には、2003年に発掘されたペルー中部Pachacamac遺跡出土ミイラの毛髪を用い、修士論文の研究から継続して行った。まずミイラを包む布で放射性炭素年代測定を行い、年代を同定した。次に年代の判明したミイラの毛髪を2cm毎の長さに切って、炭素・窒素安定同位体比分析を行い、連続的な食性の変化を調べた。その結果、以下の3点が判明した。(1)Pachacamac遺跡は海岸から500mの近さに位置するにもかかわらず、海産物を摂取していた個体と摂取していない個体の両方が存在していたこと、(2)炭素同位体比の季節変動が大きく、C3植物とC4植物を交互に摂取する一年周期の食性変化を持つ個体がいたこと、(3)高い炭素同位体比はペルー中部のナスカ遺跡のミイラと類似しており、ペルー南部のイロ遺跡のような低い炭素同位体比とは異なることが判明した。また(1)の結果をふまえ、Pachacamac遺跡に埋葬された人々の移動経緯を調べるために、降水量変化からの推測を試みようと、酸素同位体比の測定に取り組んだ。まず、毛髪試料の測定を行うためのスタンダード試料の値の同定に取り組んだが、ばらっきが大きく、値を定めるには至らなかった。試しに毛髪試料の値も測定してみたが、スタンダード試料のばらつきの範囲内に収まる程度の変動幅であったため、毛髪試料の酸素同位体比の季節変動を調べることはできなかった。この問題を解決すべく、平成22年度は毛髪スタンダードの均質性を高め、酸素同位体比の値を定める必要がある。また、より細かく食性の季節変動を調べるため、2cmよりも短い長さでの連続的な分析がSIMSを用いて可能であるか、検討していく。さらに、炭素・窒素同位体比による食性の季節変化の推定及び酸素同位体比による降水量変化の推定を同時測定によって行なえるか検討していく。
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Research Products
(5 results)