2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミイラ体組織の代謝速度差を利用した同位体分析による生活復元法の確立
Project/Area Number |
09J07140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀧上 舞 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 炭素・窒素安定同位体比 / 放射性炭素年代測定 / インカ帝国 / 食性推定 / ペルー共和国 / ナスカ / 同位体分別 |
Research Abstract |
平成22年又の研究は、(1)インカ帝国時代の食性の地域差、(2)紀元前のペルー北部高地におけるトウモロコシ利用の変遷、(3)インカ帝国以前の南部海岸地域における定住者の食性の季節変化について調査を進めた。またペルー国内の古代の食物の同位体比を得るために、ナスカ地域カワチ遺跡の食物試料サンプリングを行なった。 (1)はペルー各地のインカ帝国時代の遺跡から出土した古人骨の炭素・窒素安定同位体比測定による食性推定である。インカ帝国では活発な資源流通に伴う食性の均質性を予想していたが、古人骨の同位体分析からは食性の地域差が見えてきた。ジャガイモや豆科の植物、トウモロコシの利用量は地域によって、また遺跡の性質(祭祀的、政治的な役割)によって異なることがわかった。今後さらに分析遺跡数や個体数を増やす予定であり、そのサンプリングはすでに終了している。 (2)は北部高地の祭祀遺跡において出土した古人骨・動物骨の年代測定と食性推定を行なった。その結果、北部高地地域には紀元前800年頃からトウモロコシ利用が普及し、ヒトや家畜の飼育に用いられたと考えられるが、それ以前から神殿に捧げる動物の飼育にトウモロコシを特別に利用した可能性が考えられることがわかった。 (3)ミイラの毛髪による食性の季節変化の確認は、一個体内での組織毎の同位体分別の差を検証するために行なっている。22年度は毛髪の分析を進めることが出来たので、今後、食性の季節変動の少ない個体に絞って、同一個体の筋肉や骨の分析を進める予定である。これらの個体の筋肉や骨で出てくる値は食性の季節変化ではなく体組織の同位体分別の差だけを示していると考えることができるので、体組織内での分別補正値を決定していく予定である。 最後に、22年度の12月にはナスカ地域へ調査に行き、植物試料や動物骨のサンプリングを行なった。23年度の夏に輸出手続きを行う予定である。
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Research Products
(5 results)