2010 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母のアセトアルデヒドストレス応答における遺伝子群の一括制御機構の解明
Project/Area Number |
09J07162
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松藤 淑美 岐阜大学, 応用生物科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | Acetaldehyde / Stress tolerance / Saccharomyces cerevisiae |
Research Abstract |
本研究では、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeをモデル生物とし、強い毒性を持つ揮発性化学物質であるアセトアルデヒドに対する耐性機構の解明を目的としている。本年度は、同定したアセトアルデヒド応答に直接機能する転写因子の調節機構の解析、およびグルタチオンによる新規アセトアルデヒド耐性機構について解析を行った。 1.前年度までに、Stb5pがアセトアルデヒドストレス下における解糖系とペントースリン酸経路の間の適切な糖代謝バランスの主要な制御因子であることを示した。STB5はアセトアルデヒドストレスにより発現誘導されることを新たに見出した。また、STB5遺伝子の過剰発現は一部のペントースリン酸経路に関与する遺伝子の発現を上昇させ、アセトアルデヒド耐性を上昇させることを示した。これより、Stb5pはその発現を調節することにより、ターゲット遺伝子の発現を制御し、アセトアルデヒド応答を調節していることが示唆された。 2.抗酸化物として知られるグルタチオンの培地中への添加がアセトアルデヒドストレス耐性を上昇させることを見出した。また、アセトアルデヒドストレスに曝されると、酵母菌体内のグルタチオン量が著しく減少することを明らかにした。さらに、グルタチオンとアセトアルデヒドを混合すると、新たな物質が生成され、グルタチオンの減少とともに、アセトアルデヒド濃度も減少することを示した。これより、酵母はアセトアルデヒドストレス下では、グルタチオンによりアセトアルデヒドを捕捉し、その毒性を回避していることが示唆された。 本研究で明らかにした本酵母のアセトアルデヒドストレスに対する多様な耐性機構とその制御機構に関する知見は、遺伝子工学的手法による高発酵力を持つアセトアルデヒド耐性酵母の作成を可能にすると考えられる。
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Research Products
(5 results)