2010 Fiscal Year Annual Research Report
地理的単為生殖昆虫オオシロカゲロウの進化生態・発生・遺伝学的研究:性の意義の検討
Project/Area Number |
09J07173
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
関根 一希 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 性 / 単為生殖 / 地理的単為生殖 / カゲロウ / オートミクシス / アポミクシス / 進化 / 生態 |
Research Abstract |
生物における性の存在意義や有性生殖の進化は,進化生物学において永年議論されている重要課題の一つである。性を分化させた初期状態を留める原始的有性生物におけるアプローチと共に,二次的に両性生殖を失う方向へと進化した生物を対象として「性の意義」を議論することも重要,かつ,新たなアプローチと考えられる。両性生殖・単為生殖個体群の両タイプがモザイク的に混在分布するオオシロカゲロウ(昆虫綱・カゲロウ目)は,世界的にも稀な地理的単為生殖種であり,単為生殖への進化プロセスを考える上で興味深い生物種である。 そこで,このオオシロカゲロウを対象に,単為生殖能力の獲得や単為生殖個体群の分化・維持機構について,多角的(発生学的,遺伝的手法などを絡めた系統進化・生態学的)アプローチをとることにより,地理的単為生殖の成立プロセスをより詳細に究明することを目的としてきた。 平成22年度には,前年度ではデータ不足であった遺伝子解析を実施し,日本各地に分布する単為生殖個体群が西日本個体群に由来する単一起源であり,この子孫が移動分散することで現在認められる分布に至ったことを立証した。また,野外調査および遺伝子解析の結果から,両性個体群であった個体群がわずか20年弱の期間に単為生殖個体による雌性個体群へと遷り変わった個体群があることを明らかにした。本種におけるユニークな地理的単為生殖個体群のモザイク的分布は、単為生殖系統の急激な分布拡大に起因したものである可能性が考えられた。両生殖タイプの個体群におけるリアルタイムな動態を野外データで明らかにしたことは,性の意義を考える上で,非常に重要な知見であると言える。
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Research Products
(11 results)