2010 Fiscal Year Annual Research Report
HIV脱殻素過程に関与する宿主因子の探索とその制御機構の解明
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09J07212
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井上 睦美 熊本大学, 大学院・薬学教育部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | HIV / 脱殻 / リン酸化 / ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1 |
Research Abstract |
現在AIDSの根治療法は確立しておらず、副作用や薬剤耐性ウイルスの出現に関する問題が深刻化している。そこで、既存の治療薬とは全く異なる次世代の抗HIV剤を開発するために、HIV複製過程のうち、未だ十分に解析が進んでいない脱殻過程に注目し、脱殻メカニズムの解明及び新規治療標的の探索を試みた。 申請者はこれまでに、HIV-1脱殻因子としてペプチジルプロリルイソメラーゼPin1を同定し、Pin1によるHIV-1の脱殻制御機構を明らかにしており、カプシド(CA)タンパク質のリン酸化がPin1依存的な脱殻には必須であることを示した。そこで新規治療標的の一つとして、CAタンパク質をリン酸化するリン酸化酵素を考え、まず初めにリン酸化酵素の同定を試みた。その結果、有力な候補分子を見出すことができた。このリン酸化酵素の阻害剤によって実際にCAタンパク質のリン酸化が阻害され、ウイルス複製が阻害されるのかどうかについては、現在解析中である。さらに、in vivoでの薬物の評価を想定し、HIV-1の類縁ウイルスであるSIV_<mac239>の変異体やCAコアを用いた検討を行った結果、SIV_<mac239>もPin1依存的に脱殻することが分かった。つまり、Pin1依存的な脱殻はレンチウイルスに共通のメカニズムである可能性あり、この知見はAIDS治療薬の開発に貢献できるだけでなく、ウイルス学的にも非常に重要であると考えられる。 また現在、MALDI-TOF MS/MSを用いたCAタンパク質の翻訳後修飾解析や、酵母ツーハイブリッド法を用いた解析により、Pin1以外の脱殻関連宿主因子の探索を進めており、これらの因子も含めた脱殻制御機構を整理することで、新たな治療標的を見出せる可能性がある。
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Research Products
(7 results)