Research Abstract |
本年度はセンサ構造に用いる弾性体の選定および体位変換時等の過渡的な状況においてもセンサ出力が追従するかを検討するため,有限要素法(以下,FEM)シミュレーションおよび実験結果からセンサの静的および動的応答特性について評価した. 弾性体中に覆われた力検出部の力学的挙動は複雑であるため,せん断力センサを,検出部に生じる主ひずみの誤差が0.4%である2次元FEMモデル(FEMシミュレーションソフトCOMSOLを用いて作成)を用いて表すことにした.このモデルを用いて,センサの静的応答特性および動的応答特性を解析し,シミュレーション結果と実験結果とを比較した.実験では1)弾性体のヤング率,2)弾性体の厚み,もしくは3)内部構造の硬さを変化させたセンサの3グループに関して,センサ表面を0.1~1000Hzの正弦波加振によって変形させたときの応答を計測した.弾性体として,ヤング率600kPa程度のPolydimethylsiloxane(以下,PDMS),1GPa程度のEpoxy resinを用いた.この結果,センサの計測可能周波数帯域に内部構造はほぼ影響せず,弾性体の寸法や形状,ヤング率に依存することをシミュレーション,実験結果共に確認した。また,上記周波数範囲において,センサ出力に応答遅延は見られなかった.以上の結果から,設計したセンサの一次モードの共振周波数は1.7kHz程度であり,弾性体が硬くなるほど,もしくは小さくなるほど数値が上がることが分かった.よって,体位変換時等の過渡的な状況においてもセンサ出力に遅延時間は発生しないことがわかった.また,これまで用いてきたPDMSは,生体親和性,耐久性,応答速度,計測可能周波数帯域などの観点から,センサ構造に用いる弾性体として適当であることが分かった. このように静的および動的両方の面からセンサ特性を明らかにしたことで,弾性体の物性や寸法など,センサの設計指針を得ることが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の本年度の研究実施計画では,適当な弾性体の選定および被験者を募った計測実験を行うとしていた.被験者を募った計測実験には至らなかったものの,弾性体の選定経過において,FEMシミュレーションと実験結果から静的および動的両方の面からセンサ特性を明らかにしたことで,製作したセンサは過渡的な状況に対してもその固有振動数までであれば遅延することなく追従した応答を出力することが分かった.また,試作した下肢リハビリ機器の研究成果をまとめた論文がRehabilitation Research and Practice誌に採択された.以上の結果から,達成度は(2)程度であると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
計測実験の結果から,局所的な力の計測のみでは現象全体を的確に捉えることは難しいと判断する.よって今後,本研究では今回製作した3軸力センサをマトリクス配置をすることによって,これまでのように局所的ではなく,広域の圧力,せん断力の計測を行う.しかし,そのためにはセンサを複数配置することによる配線問題に関して検討する必要がある.この配線問題に対する対応策としては,センサの適当な配置を決定するために,FEMシミュレーションソフトを用いた実験前の解析を行う.このシミュレーションにおいて特に重要な計測対象部位のモデリングには,MRIにより計測した人体断面図から脂肪や筋肉,骨をモデリングする,従来研究でよく用いられている手法を本研究でも使用する.これによって,冗長な数のセンサを設置することなく,褥瘡の好発部位や力の解析対象部位に特化したセンサ配置が可能となる.
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