2009 Fiscal Year Annual Research Report
無限層銅酸化物ヘテロ界面における光誘起キャリア注入と電子物性制御
Project/Area Number |
09J07269
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玉置 亮 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 無限層銅酸化物 / ヘテロ界面 / 超高速分光 / 光誘起相転移 |
Research Abstract |
前年度から行ってきた薄膜試料における可視から赤外の幅広いスペクトル領域での過渡複素誘電率・光学伝導度を、過渡透過・反射率からクラマース・クローニッヒ変換なしに求める測定及び解析手法を確立した。また、ポンプ光強度を可変にするシステムの自動化、ポンプ光のエネルギーを可視から近赤外まで変えることができる測定系の構築を行い、今後無限層ヘテロ界面を有する試料に対して系統的な超高速広帯域スペクトル分光を行っていく環境がおおよそ整備された。 銅酸化物については、まだ原子層レベルで構造が制御された試料の作製条件を探索中であり、十分なデータを得ることができていないが、当初予定していなかったマンガン酸化物薄膜、SrTiO_3(110)基板上に作製したNd_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3薄膜について、低温の電荷軌道秩序相において赤外域に興味深い光誘起相の特徴を見出した。まず、過渡応答において0.5eVに鋭いピークを持ち、100psかけて立ち上がり1ns後でも安定に存在する準安定光誘起絶縁体相を見出した。一方、時分割X線回折の観測において、同一の時間スケールに軌道秩序が一部解消された格子構造が観測された(東工大、腰原グループとの共同研究)。この準安定状態は構造的にも光学的にも通常の温度・組成電子相図の中に見出すことのできないものであり、熱平衡では達することができない、光励起によって新しい「隠れた」電子相が安定化された最初の例であると考えられる。また、定常スペクトルについて超短パルス光1パルスのみの励起によって可視から赤外へのスペクトル強度の移動が観測された。このスペクトル変化は非常に長時間(10分以上)安定に存在し、マンガン酸化物において類を見ない永続的な光誘起相転移である。
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Research Products
(6 results)