2009 Fiscal Year Annual Research Report
E.フッサールを中心としたドイツ・オーストリア学派の存在論の再検討
Project/Area Number |
09J07346
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
秋葉 剛史 Keio University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 存在論 / 形而上学 / ブレンターノ / フッサール / 事態 / 存在論的依存 / 独墺学派 / ブラッドリー |
Research Abstract |
私は平成21年度において、「独墺学派の存在論の再検討」という本研究課題の達成に向け、以下のような内容と意義・重要性をもつ研究を実施し、その成果を発表した。(発表媒体については「研究発表」の欄を参照) ・E.フッサールら独墺学派の哲学者たちの中心概念であった「存在論的依存」についての研究を行った。具体的には、フッサールらの着想を引き継ぐかたちでこの概念の解明を進めている現代の形而上学者たち(P.サイモンズ、K.ファインら)の議論を取り上げ、その批判的検討を行った。この検討作業により、「依存」概念が哲学のさまざまな領域で適用例をもつ重要概念であること、またこの概念が「本質」概念と密接な結びつきをもち、その点でさらなる解明の余地が残されていることを示した。 ・独墺学派の中心人物の一人であるF.ブレンターノの存在論に関する研究を行った。より具体的には、ブレンターノ独自の立場が展開される後期の著作に焦点を当て、「付帯者」という概念の解明を軸としながら、彼の後期存在論の全体像を描く試みを行った。この作業により、全体-部分関係についての固有の見解(本質主義、潜在主義)が、ブレンターノの後期存在論の形成において極めて重要な役割を果たしているという、従来の研究では明らかにされていなかった点を示した。 ・独墺学派の哲学者たちが特徴的な仕方で導入した「事態Sachverhalt, state of affairs」という存在者についての研究を行った。より具体的には、事態という存在者を想定することに対する古典的な反論(ブラッドリーの無限後退)を取り上げ、現代的な観点からその反論の再構成を行うとともに、それを避けるための方針を批判的に検討した。この批判的検討は、事態存在論の難点を示すことによって、実体とトロープを基礎的とする(本研究が擁護する)存在論的枠組みの有利性を間接的に示すという意義をもっている。
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Research Products
(5 results)