2009 Fiscal Year Annual Research Report
図的推論を含む論理推論の認知特性に関する論理学研究
Project/Area Number |
09J07357
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 有理 Keio University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 図的推論 / 論理的推論 / competence model / 図形の有効性 / 推論過程 / 認知科学 / fMRI / 脳機能画像 |
Research Abstract |
本研究の目的は,外的資源としての図形使用が論理推論の認知プロセスにおいて果たす役割を,論理学の手法を用いたモデル化と実験心理学・脳画像研究の手法を用いた実験を通して,認知科学の観点から明らかにすることである.本研究は特に,絵や写真とは異なりある程度の抽象性を持った図形,特に論理図と呼ばれるオイラー図・ヴェン図の論理推論という複雑な処理における効果を研究対象としている。これは論理学や情報科学において扱われることの多いテーマであるが,それらの理論的な成果を踏まえた上での実証研究は皆無に近い状況である.本年度は大きく分けて以下のふたつの研究を実施した.(1)論理推論における図形使用の有効性を,前提や結論に現れる文の正しい解釈を固定し,誤解釈に基づく推論エラーをブロックする「図の解釈効果」と,推論の妥当性を判定するというプロセスを,図に対する具体的操作として実現できる「図の推論効果」のふたつに分類した.そして,それぞれのパフォーマンスをcompetence modelにおける運用エラーという形で説明し,行動実験によって確かめた.これらの研究成果は,国外ではCognitive Science Society年次大会,国内では図的推論ワークショップなどにおいて発表され,多くのフィードバックを頂戴した.それらを受けてまとめ直したものが,国際査読を経てSpringer社LNCSの17ページのconference paperと,Cognitive Science Society大会抄録の6ページのconference paperとして受理され来年度に公刊される予定である.(2)また一方でこの図形の有効性は,図形の使用が推論に必要とされる認知的負荷を軽減する過程と見ることもできる.そこで,論理的推論で特異的な脳賦活が見られるparietal-frontal systemに図形の使用がどのような影響をもたらすのか,推論における負荷の軽減は物理的・神経レベルでどのように表されるのかを明らかにするために,fMRIを用いた脳画像実験を実施した.この研究成果は次年度発表される予定である.
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Research Products
(4 results)