2011 Fiscal Year Annual Research Report
小児期の心的ストレスが児童養護施設入所児童のこころと脳の発達に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
09J07360
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鈴木 華子 熊本大学, 大学院・医学教育部, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 児童養護施設 / 逆境的小児期体験 / メンタルヘルス / 抑うつ症状 / マルトリートメント / アタッチメント / 自尊感情 / ストレス |
Research Abstract |
本研究の質問紙調査に参加してもらう為、全国の児童養護施設32施設に協力を要請し、6都県にわたる16施設(返答率50%)から返送があった。小学4年生から高校3年生が対象となり、全体で468人が回答した。また、承諾した2施設においては面接調査を実施し、小学4年から高校3年までの60人の児童を対象として構造化面接を実施した。面接調査では、全体の60%(n=36)の児童になんらかの疾患が認められた。精神疾患が全く見られない児童から、多い児童で9つの疾患が見られ、全体の平均は1.7個であった。1番目に多くみられたものは過去の希死念慮・自殺企図(n=21)、2番目に多く見られたものは反抗挑戦性障害(n=14)人、3番目に多く見られたものは、現在の希死念慮・自殺企図、分離不安、PTSD(心的外傷後ストレス障害)(n=8)であった。次に、逆境的小児期体験と抑うつ症状の間にどのような要因が関連しているのかを、共分散構造分析で調べた。逆境的小児期体験を3分類し(マルトリートメント、親の精神疾患・死別、親の反社会的行動)、それぞれが愛着と自尊心を通して抑うつ症状に影響を及ぼすと仮定した結果、親からのマルトリートメントは、愛着と自尊感情を介して抑うつ症状を予測するが、抑うつ症状に直接は影響しないことが分かった。また、親の精神疾患・死別や拘禁・薬物依存等の反社会的行動の体験は、抑うつ症状を予測しないことが明らかになった。これらの結果から、児童虐待の予防の重要性が再強調され、また、小児期に虐待を受けた青年が抑うつ症状を呈している際には、愛着の改善や自尊心の向上を目指した介入をすることにより、抑うつ症状の改善を目指すのがよいと考えられる。今後の対策として、親の疲弊を未然に防ぐ社会ネットワークの構築等の基盤的な整備と共に、子どもを社会で見守るというような社会的価値観を変えていくことも必要不可欠であるといえる。
|
Research Products
(4 results)