2009 Fiscal Year Annual Research Report
現生人類集団の拡大と多様化におけるクローン病原因ゲノム領域の進化プロセス解明
Project/Area Number |
09J07453
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中込 滋樹 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | クローン病 / 潰瘍性大腸炎 / 日本人集団 / TNFSF15 / dominant / recessive効果 |
Research Abstract |
クローン病は腸の粘膜において慢性的な炎症が生じる炎症性腸疾患である。ヨーロッパ人における発症率が顕著に高いため、これまでヨーロッパ人の患者と健常者を用いて30以上のクローン病原因候補遺伝子座が同定されている。また、近年日本人でも急速にクローン病の発症率が増加している。しかし、ヨーロッパ人において同定された疾患アレルは本州地方の日本人集団ではクローン病に関係しないことが示されている。このことから、クローン病に関係する遺伝子は日本人とヨーロッパ人の間で異なる可能性がある。そこで本研究では、北部九州地方の日本人集団を用いて、ヨーロッパ人において同定された疾患アレルがクローン病あるいは炎症性腸疾患の1つである潰瘍性大腸炎に関係するかを調べた。本研究では異なる研究グループによって十分な再現性が得られている8つのクローン病原因候補遺伝子座(NOD2、IL23R、TNFSF15、ATG16L1、SLC22A4、SLC22A5、IRGM、10q21)に着目し、9個のSNPsに関して疾患との関連性を調べた。その結果、TNFSF15に位置するSNPが北部九州地方の日本人集団ではクローン病・潰瘍性大腸炎の両疾患に関係することが示された。この疾患アレルは本州地方の日本人集団では潰瘍性大腸炎に関係しないことから、日本人とヨーロッパ人の間だけでなく、日本人集団内でも炎症性腸疾患原因候補遺伝子が異なるかもしれない。さらに、TNFSF15の疾患アレルはクローン病においてはdominant、潰瘍性大腸炎においてはrecessiveとして作用することも示された。つまりTNFSF15疾患アレルのdominant/recessive効果は、それぞれの疾患に関係するその他の遺伝要因や環境要因の影響を受け、それらの総合的な効果により決定されている可能性がある。よって本研究における成果は、クローン病の遺伝学的背景と人類集団の進化プロセスは密接に関係しており、日本人集団に特異的な炎症性腸疾患の原因候補遺伝子あるいは環境要因を同定する必要性を示している。
|
Research Products
(6 results)