2010 Fiscal Year Annual Research Report
現生人類集団の拡大と多様化におけるクローン病原因ゲノム領域の進化プロセス解明
Project/Area Number |
09J07453
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中込 滋樹 北里大学, 医療系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | クローン病 / 自然選択 / ヨーロッパ人集団 / NOD2 |
Research Abstract |
クローン病は腸の粘膜において慢性的な炎症が生じる炎症性腸疾患である。ヨーロッパ人における発症率が顕著に高いため、これまでヨーロッパ人の患者と健常者を用いた全ゲノム相関解析により30以上のクローン病原因候補遺伝子座が同定されている。しかし、それら疾患アレルは日本人を含む東アジア人ではクローン病に関係しないことが示されている。このことから、これまで同定されてきた遺伝子座ではクローン病アレルがヨーロッパ人でのみ維持されてきた可能性がある。そこで本研究では、ヨーロッパ人においてクローン病に関係することが示されている8遺伝子座(NOD2,IL23R,TNFSF15,ATG16L1,SLC22A4,SLC22A5,IRGM,10q21)に着目し、アフリカ人、ヨーロッパ人、東アジア人の各地域集団における多型データを基に進化学的解析を行った。 その結果、NOD2遺伝子座ではクローン病アレルがヨーロッパ人集団に特異的に拡がっていることが示された。さらに、その多くがヨーロッパ人集団でのみ高い頻度で存在するハプロタイプ(H1)に連鎖していることも示された。そこでH1が自然選択と遺伝的浮動のどちらによって拡がったのかを検証するために、人類集団の移動及び拡散の歴史をシミュレーションにより再現し、ハプロタイプパターンを調べた。それにより、ヨーロッパ人におけるH1の頻度は中立条件下で期待される頻度よりも有意に高いことが示された。このことから、H1は自然選択によりヨーロッパ人に拡がり、それに伴ってクローン病アレルも維持されてきたとのではないかと考えられる。そして、クローン病の発症率がヨーロッパ人において顕著に高いことを考えると、本研究における結果は人類集団における適応進化の1つの副産物として、現代ではクローン病の発症リスクがもたらされたことを示唆している。
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Research Products
(3 results)