Research Abstract |
本研究は,教育の質向上に関する要求を背景に,教師による授業改善のための授業リフレクション手法の開発に取り組むものである.本年度は,FDプログラムの実施において高い成果をあげている豪州メルボルン大学Centre for the Study of Higher Education (CSHE)において(1)FD活動の参与観察・分析,またこれに基づく(2)本研究の提案手法の実用化,及びFDプログラムの設計を行った.まず,本研究における提案手法の現場への適用,及びこれによるFDプログラムの開発に必要となる具体的な知見を得るため,CSHE及びメルボルン大学内の教授学習支援関連組織が実施する各種FD関連プログラムの参与観察,分析を実施した結果,当該FDプログラムは,高等教育分野の研究成果を利用した理論的セミナー,マイクロティーチング,ピアレビューを含む機能的な実践,及び豊富なディスカッションの機会から構成されていた.また,FDプログラムの担当者をまず一研究者として位置づけ,各自が自身の研究を主体的に実践することにより,CSHEが提供するFDプログラムの理論的基礎を支えるといったコンセプトに基づいていることが明らかになった.上記結果を踏まえ,(2)として,2010年と2011年に実施した2つの研修のプログラム開発に取り組み,本研究における提案手法を用いた授業改善の実施方法に関する講義を新たに開発し実施した.その結果,これまでのCSHEによるピアレビューの取組みに加え,セルフリフレクションの具体的な実践方法の習得という位置づけで,本研究における提案手法を研修プログラムに組み入れることが可能であることが明らかになり,研修受講者からも高い評価が得られた.また,これと並行して,提案手法の実授業への適用のために,授業中の対話が重要となる語学教育の1つとして中国語教育を例にとり,そのための教授設計の実践を行った.ここでは,これまでの授業内容をふり返り,新たにeラーニングを組み合わせた授業内容を設計することで,質の高い授業を実施できることを確認した.
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