2011 Fiscal Year Annual Research Report
弱重力レンズ効果の高精度解析法の開発とそれを用いた宇宙の暗黒成分の探査
Project/Area Number |
09J07496
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮武 広直 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙論 / ダークエネルギー / ダークマター / 重力レンズ / 銀河団 |
Research Abstract |
申請書で述べた宇宙論的弱重力レンズ効果を用いた宇宙論パラメータへの制限はデータが足らないため実現できなかったが、遠方巨大銀河団の質量を弱重力レンズ効果を用いて測定することで、現在の標準的宇宙論モデルを検証することに成功した。銀河団は宇宙の中で最大の自己重力束縛系であり、宇宙論モデルに非常に敏感である。よって、一つの遠方巨大銀河団存在が、現在の宇宙論モデルと矛盾するかどうか検証することができる。本研究ではAtacama Cosmology Telescopeによってスニヤエフ・ゼルドビッチ効果を通して発見された赤方偏移0.81にある遠方巨大銀河団ACT-CLJ0022-0036を、すばる望遠鏡主焦点カメラSuprime-Camを用いてフォローアップ観測を行い、弱重力レンズ効果の解析によってその質量を求めた。弱重力レンズ効果は、ダークマターなどの質量によって時空が歪むことにより、銀河像が歪んで見える効果であり、銀河団の場合にはダークマターを含む銀河団の質量により、その背景にある銀河像が歪んで観測される。データの一次処理にはすばる望遠鏡次期主焦点カメラHyper Suprime-Camのために開発しているソフトウェア群(HSCパイプライン)を用いた。背景銀河の選択には5バンド撮像による測光的赤方偏移推定法を用いた。銀河像の歪みを引き出すための銀河の形状測定には、一昨年度から開発している直交関数系を用いて銀河像を数学的に正確に表現する方法を用いた。その結果、重力レンズ信号を3.6の信号雑音比で検出し、質量を推定することができた。この質量は現在の宇宙論モデルと矛盾しないことがわかった。また、この結果は遠方の銀河団においても弱重力レンズ効果を用いて質量を推定することが可能であることを示したという点で意義深いものである。
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Research Products
(6 results)