2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J07559
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅田 直之 Osaka University, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経発生 / 神経細胞移動 / 神経分化 |
Research Abstract |
大脳新皮質は、記憶・認知などの高次脳機能を担う脳領域である。大脳新皮質を構成する神経細胞は、胎生期において神経前駆細胞から誕生する。新生した神経細胞はその後、脳表層側に向かって移動し、適切な位置に配置した後に、軸索や樹状突起を伸展して成熟する。このような一連のプロセスは、大脳新皮質の適切な形成と、正常な機能発現に不可欠であるが、その分子メカニズムには不明な点が多い。本研究では、LKB1と呼ばれる蛋白質キナーゼに着目し、大脳新皮質の発生過程における役割を精査することで、大脳新皮質形成の分子メカニズムに迫ることを目的とする。LKB1は、様々な動物種の初期胚の極性を制御することが知られる極性分子であり、発生期の大脳新皮質にも発現しているがその機能は長らく不明であった。大脳新皮質において、神経細胞が移動する際は、(1)進行方向に先導突起が伸長し、(2)中心体が先導突起内を移動し、(3)核が中心体の方向に移動する、というサイクルを繰り返す。この移動プロセスにおいてLKB1は、中心体の前方への移動を司り、神経細胞移動に必須であることを見出した(Asada et al., 2007;深田、浅田2008)。本年度は、さらにLKB1の下流シグナリングを詳細に解析し、以下の知見を得た。つまり、先導突起の先端部においてLKB1がGSK3βと呼ばれるSer/Thrキナーゼをリン酸化して不活性化する。この結果として、APCと呼ばれる微小管結合タンパク質が微小管の先端に結合し、微小管を細胞膜にアンカーする。これにより、微小管が進行方向に引っ張り上げられ、同時に、微小管の重合中心である「中心体」が進行方向に移動する、というモデルを提唱できた(Asada and Sanada,査読中)。LKB1の機能を阻害すると、上述した細胞内現象が観察できなくなり、中心体の移動が停滞する。さらに重要なことに、神経細胞の移動が停止する。これらの結果は、中心体の前方移動が神経細胞の移動において中心的な役割を果たすこと、さらに神経細胞内の局所的なシグナイリングが神経細胞の移動に極めて重要であることを世界に先駆けて示した知見である。また同時に、移動中の神経細胞において、中心体が移動するために必要な分子基盤を初めて明らかにした成果である。
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Research Products
(1 results)