2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J07564
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 聡 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鬼神観 / 妖怪 / 精怪 / 辟邪 / 雑占書 / 初期道教 / 俗信 |
Research Abstract |
今年度は、六朝初期道教の鬼神観及びそれと密接な関係を持つとされる基層文化的雑信仰中に見える鬼神観を中心に検討を行った。具体的には、先ず、六朝初期の道教経典である『女青鬼律』『洞淵神呪經』の検討から、当時の世情を反映して形成された、冥界の官吏が善悪の両義的性質を持つというイメージが、その後の道教では、淫祀が蔓延る現状を説明し、淫祀から正常な祭祀に改めさせるため、方便的に教導に組み込まれたと結論づけた。(「『女青鬼律』に見える鬼神観及びその受容と展開」)同時に、これらの経典とほぼ同時期に成立し、当時の基層文化的辟邪観念を反映した『白澤圖』の検討を行った。本書は悪鬼精怪の姓名録のごとき体裁を持ち、従来も『女青鬼律』との類似が指摘され、注目されてきた。しかしその実『白澤圖』は早くに散佚したこともあり、その具体的検討は困難であった。そこで、本研究では、従来の輯本数種を踏まえ、さらに新たな資料からの佚文を増補し、校訂を行うことで、資料的不備を可能な限り補完した。また佚文を年代順に配列し、その受容・流布・散佚までの過程を検討し、資料的性格を明らかにした。そこから、『白澤圖』受容の背景には、別系統の資料との混同など、従来想定されなかった状況も明らかになってきた。(「『白澤圖』輯校-附解題」)今後、これらの基礎研究を下敷きに、『白澤圖』に見える鬼神観の特徴を明らかにしていく。今年度は、道教と雑信仰中の鬼神観を個別的に明らかにしたが、今後は相互の影響関係も踏まえつつ、比較検討も行っていく。また、雑占書や密教経典などにも類似の性質を持つ辟邪書があり、併せて検討を進めて行きたい。なお、以上の検討を行う上で、種々の文献に対する、より高度な書誌学的検討が必要となってきた。そこで本年二月より若手研究者海外派遣事業の助成を受け、書誌学の専門機関である復旦大学古籍整理研究所にて研鑽を積みながら、本課題を遂行する。
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