2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J07565
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
増田 明 九州工業大学, 生命体工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 回避行動 / 社会的な行動調節 / 動物実験 / 社会的関係性 / 既知関係性 / 内側前頭前野 / 脳破壊実験 / ラット |
Research Abstract |
「回避学習の社会的な行動調節」は行動学的、神経学的にほとんど分かっておらず、解明が急務である。本研究は、ラットにおいて「回避学習の社会的な行動調節」の行動学的特性を調べ、またそれを可能にしている神経基盤を明らかにすることを目的としている。初年度の平成21年度は、大きく二つの実験系を推進し、それぞれ以下のような結果を得た。 1.既知関係性の影響:動物の世界においては個体と個体の関係性、つまり社会的関係が重要な意味を持つが動物実験ではまだあまり調べられておらず、行動学的な基礎の確立はほとんどなされていない。そこで個体間の既知関係性、つまり互いに知っているもの同士と見知らぬもの同士の比較を行った。危険回避情報の伝達は既知なもの同士のほうが強く起こり、既知関係がない同士では起こりにくいことがわかった。回避をやめる行動の伝達は既知関係による影響は認められなかった。この結果は、危険回避の情報が繋がりのある集団内で伝達されることを示唆し、危険回避の情報伝達においても社会的関係性が重要であることの証拠となった。 2.内側前頭前野の破壊による行動の変容:内側前頭前野は記憶・学習だけでなく社会行動にも関与すると考えられている。そこで薬物投与により領域特異的に神経細胞を破壊し、行動変化を観察した。その領域を破壊された動物は、危険回避情報および回避をやめる情報を受けとったが、その行動変化は通常の動物と比べ異常に大きく、また強く残った。このことは、内側前頭前野が社会的な行動調節において、その行動変化の程度が大きくならないよう調節するために働いていることを示唆する。回避行動の社会的な調節過程において脳部位の関与を脳破壊実験により直接的に検討した初めての例となるもので、現在神経科学系の国際ジャーナル「Learning & Memory」に投稿予定である。
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Research Products
(7 results)