2011 Fiscal Year Annual Research Report
外生菌根菌の宿生特異性の進化と宿主転換―フタバガキ科樹種との共生関係に着目して―
Project/Area Number |
09J07635
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
佐藤 博俊 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 菌根 / 共進化 / 多様性 / 熱帯 / 共生 / DNA |
Research Abstract |
本研究は、植物と相利共生する菌類である外生菌根菌と東南アジア熱帯地域で適応放散したとされるフタバガキ科樹種の共進化関係について調べることを最終的な目的としている。 外生菌根菌の地理的な分布が宿主植物に対する特異性によってどの程度決められているかについて調べるため、ベイジアン解析によって菌類の分布パターンの推定を行った。本研究はボルネオ島のランビル国立公園(マレーシア・サラワク州)で採集したフタバガキ科樹種のルートチップサンプルを用いて解析を行う予定であったが、サンプルの日本国内への持ち出しに時間がかかったため、代用としてすでに大量のサンプルを保有していた屋久島の菌子実体サンプルについて解析を行った。屋久島の低地照葉樹林で菌子実体を採集した子実体に対し、核ITS2領域の塩基配列を解読し、その相同性に基づいて種の識別を行った。得られたすべての分類ユニット(OTU)についてBlast検索(GenBankデータベースとの照合)を行い、相同性の高い塩基配列をもつ菌類サンプルが採集された地域をリストアップした。さらに、「実際にはその地域に存在しているがGenBankに塩基配列が登録されていない種」を考慮するため、Zero inflated binomial modelを導入した。これらの解析により、屋久島に生育する外生菌根菌は、その宿主植物であるブナ科植物の分布に非常に強い制約を受けており、大半の種は東アジア地域など近隣の地域に分布している可能性が高いことが分かった。一方で、屋久島に生育する腐生菌は、分布を制約する要因は弱く、非常に広範囲に分布している可能性があることが分かった。本研究の結果から、外生菌根菌の地理的分布パターンは、歴史的背景、すなわち宿主植物との共進化関係の影響を強く受けているこどが分かった。この研究の内容については論文としてまとめ、現在、投稿中である。本研究で用いた解析手法は、今後ランビル国立公園において採集したサンプルについて適用していく予定である。
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Research Products
(7 results)