Research Abstract |
本研究では,サーモグラフィを利用した薄膜ライブラリ上での高効率熱特性評価法を研究することを目的としている.具体的な熱特性としては,薄膜アモルファス合金の結晶化開始温度と時間温度変態曲線,薄膜形状記憶合金のマルテンサイト変態温度の測定の実現を目指す. この中から,平成21年度は,薄膜アモルファス合金の結晶化開始温度測定について重点的に研究を行った.従来,DSC法による単一サンプルでの測定が一般的であったが,本研究では,サーモグラフィを利用し,結晶化を放射率変化として捉えることで,薄膜ライブラリ上での一括測定を行った.実際にPd-Cu-Si系薄膜アモルファス合金ライブラリで測定を行い,組成の異なる246のPdCuSi薄膜アモルファス合金の結晶化開始温度を,約2週間で測定することに成功した.従来法では,100日以上かかることが予想され,飛躍的な高効率化を実現したと言える.さらに,この中から3組成について,DSC試験の結果と比較を行ったところ,最大8Kの差異での測定を実現しており,本測定法の妥当性についても示すことができた.これらの成果について,21年度中に論文2本(内1本は査読返答済),国際会議1回,国内会議2回で発表を行った. また,並行して次年度以降の重点課題である,時間温度変態曲線,マルテンサイト変態温度測定のための準備も進めた.これらの測定には,それぞれ温度傾斜保持加熱機構と,加熱・冷却速度制御可能加熱冷却機構が必要となるため,これらの装置の製作を行った.温度傾斜保持加熱機構は,50mm程度の範囲内で200K以上の温度傾斜保持に成功した.加熱冷却機構は,ペルチェ素子を利用し,250~400K程度の温度範囲で10K/minの制御に成功した.
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