Research Abstract |
本研究では,サーモグラフィを利用し,条件の異なる微小な薄膜サンプルを集積した薄膜ライブラリ上での高効率熱特性評価法の実現を目的としている,具体的な熱特性として,薄膜アモルファス合金の結晶化特性,薄膜形状記憶合金のマルテンサイト変態温度の評価を目指してきた.平成21年度には,薄膜アモルファス合金の結晶化開始温度の高効率評価に成功した.そこで本年度は,薄膜アモルファス合金の時間温度変態曲線の高効率な解明法と,薄膜形状記憶合金のマルテンサイト変態温度評価法の基礎検討について重点的に研究を行った. 時間温度変態曲線の高効率な解明法では,温度傾斜真空加熱炉を製作し,他種類の温度条件での保持試験を一括で行う手法を提案した,この加熱炉により,薄膜アモルファス合金サンプルを加熱・保持し,温度の異なる各部での結晶化までに要した時間を測定する.結晶化は,サーモグラフィにより検知する.Pd-Cu-SiおよびNi-Nb-Zr薄膜アモルファス合金で実際に測定を行ったところ,各合金の時間温度変態曲線を1回の加熱・保持試験で得ることに成功した.また,得られた結果から,アーレニウスプロットによる活性化エネルギの算出にも成功した.提案する手法では,従来の示差走査熱量計による測定と比較し,72%の測定時間の削減を達成した. 次に,薄膜形状記憶合金については,大面積のTi-Pd-Ni薄膜形状記憶合金のマルテンサイト変態温度および逆変態温度を,サーモグラフィで検知することに成功した.サーモグラフィによる,非接触測定に成功したことで,今後,組成傾斜を有する薄膜ライブラリを利用した,薄膜形状記憶合金の変態温度のコンビナトリアル評価を実現することが期待できる。 本研究課題では,上述の成果について,本年度中に投稿論文5編,国際会議での発表2回,国内会議での発表1回を行った.
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