2009 Fiscal Year Annual Research Report
脂質成分のHIV感染における機能解明と新規抗エイズ治療薬開発のための基礎研究
Project/Area Number |
09J07637
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
神山 陽香 Nagasaki University, 工学部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | HIV-1 / ラフト / エズリン / コレラ毒素 / ガングリオシドGM1 |
Research Abstract |
細胞膜上には糖脂質やコレステロールに富んだ「ラフト」と呼はれる領域があり、HIV-1感染においても重要であると考えられている。 これまでの当研究室の実験結果から細胞膜上のラフト構造を変化させる物質がHIV-1ベクター感染の新規治療薬となる可能性を示唆した。本研究ではこの可能性をさらに実証し、HIV-1感染におけるラフトの役割を明らかにすることを目的とし、(1)ラフト結合物質、(2)ラフト特異的に存在するタンパク質のHIV-1ベクター感染における影響を解析した。 (1)ラフト結合物質のHIV-1ベクター感染における影響の検証 実験に用いたコレラ毒素サブユニットB(CT-B)はラフト特異的に存在するガングリオシドGM1に結合する性質を持つ。CT-B処理した細胞にHIV-1ベクターを感染させた結果、約30%まで感染が抑制された。次に、ウイルス感染サイクルにおけるCT-Bの抑制段階を特定するため、Binding assayおよびFusion assayを行った。実験の結果より、CT-Bはウイルスが細胞と膜融合する段階を抑制していることがわかった。CT-B処理の細胞増殖への影響は見られなかった。 以上のことから、CT-BがHIV-1ベクター感染抑制効果を持つことが実証され、ガングリオシドGM1が新規HIV治療薬のための標的となることが示された。 (2)ラフト特異的に存在するタンパク質(エズリン)のHIV-1ベクター感染における影響の検証 ラフトがHIV感染に重要であることをさらに確認するためラフト特異的に存在し、様々な膜タンパク質の機能に関与することが知られているエズリンのHIV-1ベクター感染における役割を解析した。エズリンはリン酸化されることで活性化することが知られている。エズリン・リシ酸化のHIV-1ベクター感染における働きを解明するためリン酸化部位に変異を導入したエズリン変異体を用い、HIV-1ベクター感染に及ぼす影響を解析した。実験の結果より標的細胞中の非リン酸化型エズリンの増加がHIV-1ベクター感染を抑制することが示された。 以上のことよりラフト特異的に在するエズリンが新規HIV治療藥のための標的となることが示された。
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Research Products
(1 results)