2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J07638
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
本間 玲奈 (武智 玲奈) Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | アカネズミ / 社会的学習 / 文化的伝達 / 採餌行動 / オニグルミ |
Research Abstract |
採食行動の社会的学習は,採餌効率を高め捕食リスクを軽減させることから,動物生態学者によってその実証が盛んに行われてきた.一方で,社会的学習がどのような状況で起こるのか,という問題についてはほとんど取り扱われてこなかった.本研究では,アカネズミにおけるオニグルミ種子の採食行動について,社会的学習が起こっているのかを検証し,さらにどのような状況で社会的学習が促進されるのかを明らかにすることを目的とした.まず,他個体の行動観察,および食痕からの学習を検討するため,オニグルミにnaiveな個体に,上手に採食する個体を提示する実験,食痕を与える実験をそれぞれ行った.通常のクルミだけを与えた対照実験のグループと採食行動を比較した結果,行動提示実験と食痕提示実験のどちらのグループも,対照実験のグループと差は認められず,これらを手掛かりとした社会的学習は検出されなかった.次に,母親から子どもへの採食行動の社会的学習について検証した結果,母親が育児中に子どもの前でクルミを上手に食べたグループでは,母親がクルミを採食しなかったグループに比べ,上手にオニグルミを食べられるようになった子どもの割合が最も高くなり,母親から子どもへの社会的学習が検出された.オニグルミの自生している地域と自生していない地域とで比較をすると,オニグルミが自生している地域の母子間の方が,上手に食べられるようになる子どもの割合が高く,より社会的学習が顕著である傾向が認められたことから,オニグルミが利用できる環境では採食行動の社会的学習が促進される可能性が示唆された.このように,本研究で野生動物においてどのような状況下で社会的学習が促進されるかが明らかとなれば,動物生態学の基礎的知見となるだけでなく,一般社会でも関心の高い動物の文化の進化の解明に繋がることが期待できる.
|
Research Products
(2 results)