2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J07638
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
本間 玲奈 (武智 玲奈) 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会的学習 / アカネズミ / 採餌行動 / 動物生態学 / オニグルミ |
Research Abstract |
多様な餌資源を利用する動物にとって,採食行動は学習による柔軟性を有している方が,新規な餌への対応という点で適応的である.学習には,試行錯誤による自己学習と,他個体から新たな行動様式を獲得する社会的学習がある.試行錯誤では適切な行動を身につけるまでに時間がかかるため,社会的学習の方が一般的には学習効率は高いが,環境条件や個体の齢・血縁関係などによって,社会的学習の効果は変化すると言われている.本研究では,アカネズミによるオニグルミ種子採食技術の学習に着目し,まず,単独生活を送る亜成獣~成獣の時期における社会的学習の効果を調べるために,オニグルミ種子を食べたことがない個体に,単独飼育下で種子を与える実験(自己学習のみ),食痕付きの種子を与える実験(食痕に基づく社会的学習),上手に食べる個体を隣接させてその行動を見せる実験(模倣による社会的学習)を行った.自己学習のみの実験では,採食技術を向上させる個体が見られた.食痕および模倣による社会的学習では,自己学習のみの実験を上回る被験個体の行動変化は認められず,これらの社会的学習の効果は検出されなかった.さらに,母親と共に過ごす幼獣の時期における社会的学習の効果を調べるために,育児中にオニグルミ種子を与え続ける実験(母子間伝達による社会的学習)を行った.その結果,母親が育児中に子どもの前でクルミを上手に食べたグループでは,母親がクルミを採食しなかったグループに比べ,上手にオニグルミ種子を食べられるようになった子どもの割合が増加し,採食技術が母から子へ伝達されることが示された.このように,アカネズミは母親と共に過ごす時期には母親から採食行動を社会的に学習し,単独生活を送る時期には自己学習によってその利用効率を高めていた.本研究の成果は動物生態学の基礎的知見となるだけでなく,文化の進化の解明に繋がることが期待できる.
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Research Products
(1 results)