2011 Fiscal Year Annual Research Report
複合フェルミ粒子の超流動に基づく有限密度QCDと冷却原子気体の統一的解明
Project/Area Number |
09J07683
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 賢志 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 二成分フェルミ原子気体 / 中間子凝縮 / 双極子・双極子相互作用 / スピン密度波 / 非相対論的場の量子論 / ゲージ場の凝縮 / 冷却分子気体 |
Research Abstract |
特別研究員三年目となる今年度は、有限密度QCD物質の特性を冷却原子・分子気体によって間接的に検証するという目的の下、前年度に引き続き冷却原子・分子気体における電気/磁気双極子相互作用をする二成分フェルミ系のモデルを構成し、その詳細な解析を行った。 中性子星内部のような核子有限密度系においては、核子と中間子との間の非等方的相互作用の結果、空間的に非一様な中間子凝縮が起こると考えられている。そこで、核子を二成分フェルミ原子(又は分子)、ベクトル型中間子をフォトン(電磁場)に読み替え、磁気(又は電気)双極子型相互作用をするフェルミ原子気体のモデルを構成した。 さらに、粒子数密度分布が一次元方向に周期局在化し、スピン密度期待値が反強磁性分布を持つ変分状態(Anti-Ferro Smectic-C,AFSC state)を用いて多体系の変分エネルギー関数を導出した。原子核物理における先行研究ではハートリー近似(平均場近似)による研究しかなされていなかったが、本研究ではフォック項(交換相互作用項)の寄与を算出する事にも成功した。さらに、フォック項の寄与が最大で全体の30%を占める事を示し、定量的に無視できない事を指摘した。そして、AFSC状態(非一様ベクトルボソン凝縮状態)が、自由フェルミ気体状態やフェルミ面変形状態よりもエネルギーが低くなるようなパラメータ領域(密度、結合定数領域)を特定した。 また、実際の冷却原子実験における粒子数密度、原子(例えばDy)の磁気双極子モーメントの値、分子(例えばLiCS)の電気双極子モーメントが、このような非一様凝縮を実現する領域にあることを定量的に示した。以上を踏まえ、核子有限密度系における中性ロー中間子の非一様凝縮現象がフェルミ原子気体において模擬実験可能であるという結論を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は中性中間子凝縮のみを対象とし、それに対応する冷却原子系の研究を行ってきた。しかし研究を進めるうちに、荷電中間子凝縮を対象とする冷却原子系を発見した。そして、その両者を統一的に扱う理論的枠組み、及び解析手法を考案することに時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
粒子数密度に偏りのある二成分フェルミ原子(分子)気体の平衡状態の性質を研究し、荷電中間子凝縮が冷却原子(分子)気体によって間接検証可能であることを示す。その場合、中性中間子凝縮と異なり、時間変化するスピン密度波を解析する事になり、そのような状態が実際の実験で用いられるレーザートラップ中でどのように観測されるかを予め理論的に記述する必要がある。
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Research Products
(1 results)