2011 Fiscal Year Annual Research Report
RNAi機構を介したヘテロクロマチン構造形成における分裂酵母Chp1の新規機能の解析
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09J07753
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
石田 真由美 関西学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 転写制御 / ヘテロクロマチン / RNAi |
Research Abstract |
本研究は、分裂酵母のRNAi機構を介したヘテロクロマチン形成で中心的役割を果たす因子であるChp1のクロモドメイン(Chp1-CD)がメチル化ピストン(H3K9me)とRNAの両方を認識するという発見に基づき、その認識機構の詳細を明らかにすることを目的に以下の3つの課題を遂行した。 1.RNA結合能を欠損する変異型Chp1-CDのH3K9me認識能の定量的測定:昨年度に引き続き、Chp1-CDのRNA結合に関与する3つのアミノ酸残基の変異が、Chp1-CDのH3K9me認識能に与える影響を調べるため、超高感度等温滴定型カロリメータ測定を行い、結合定数を算出した。その結果、RNA結合欠損型Chp1-CDのH3K9me認識能が野生型とほぼ同程度に保持されていることが確認された。 2.Chp1-CDのRNA認識能とH3K9me認識の相互関連の解析:昨年度までに示唆されていた、Chp1-CDのRNA結合能とH3K9me認識能の相乗的な関係について、EMSAによる滴定実験を行い、その結合定数を算出した。その結果、Chp1-CDのRNA結合がH3K9me添加により約10倍強くなったことから、Chp1-CDはH3K9me結合時には単体時とは異なる様式でRNAと結合することが示唆された。NMR解析の結果、RNA添加によってC-末端のα-ヘリックス領域の化学シフトが確認されたため、変異解析から、実際にこの領域がH3K9me結合時のChp1-CDのRNA結合に関与することを確認した。 3.ヘテロクロマチン構造形成におけるChp1-CDのRNA結合能の意義の解析:RNAi機構を介したヘテロクロマチン構造形成におけるChp1-CDのRNA結合能の重要性を調べるため、RNA結合能を欠損させた変異Chp1を発現させ、ヘテロクロマチンタンパク質Swi6とH3K9meの局在、小分子RNAの産生、RITS複合体形成への影響を調べた。その結果、Chp1-CDのRNA結合能はRITS複合体形成には大きな影響を持たないが、Chp1のサイレンシング機能に必須であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予想に反し、Chp1-CDのRNA結合部位がChp1-CD単体とH3K9me結合時で異なっており、in vitroにおいてもin vivoにおいても、その解析に多くの実験手法と時間を要した。この予想外の結果と、それに伴う新たな実験の追加により、本研究の計画外の成果が得られたことは評価できる。また、当初予定していた細胞周期におけるRNA結合能の役割やChp1の化学修飾の関連性については未解析であり、今後の課題と考えられる。
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Research Products
(2 results)